製品で「実用」先端、セミナーで「最」先端!(5)
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公立大学法人名桜大学名誉教授 清水 則之 氏
ビジネスの相手として好印象を持っている
――少し、話題を変えます。先生は、「COMPUTEX Taipei」に20回参加、現在では日台の企業を結ぶコンサルタントもしておられます。先生の考える好ましい日台関係はどのようなものでしょうか。
清水 よく言われますように、台湾人は日本人に対し好印象を持っています。日本は良い国で技術もとても進んでいる、台湾企業の製品もいろいろと買ってくれている。また、ビジネス相手としても高く評価されていることを実感します。しかし、彼らに聞くと、具体的に仲良くビジネスをしていく方法がわからないと言います。
日本と台湾の中小企業は積極的に交流すべき
私はコンサルタントとして、主に中小企業が中心ですが、いくつかの台湾企業を訪問します。そうすると、ほとんどの企業で、「日本から来たのは初めてである。日本とビジネスをしたいが、チャネルがなくて困っている」と相談を受けます。
一方、日本人も何となく台湾に親近感を持っています。沖縄の人などは同じ琉球王国であったなどと強い親近感を持つ人もいます。しかし、どこかでボタンを掛け違え、上手くビジネスが進んでいないのも事実です。私は、日本の中小企業と台湾の中小企業はもっともっと積極的に交流をしていくべきだと考えています。そして、それは充分に可能とも、自分の実体験から思っています。
そのために、「COMPUTEX Taipei」を視察することも大事ですし、「COMPUTEX Taipei」に出展することも、その交流の機会を拡げるチャンスとなります。これはトレードショーなので、深い具体的なビジネス上の交流は大歓迎だからです。台湾には、私の友人たちもそうですが、30年以上そのような仲介ビジネスを行っている日本人コンサルタントがいます。言葉に不安がある場合は、いつでも彼らに意見を求めることもできます。
私は沖縄の名桜大学在職時代から知己を得たITの中小企業や、その会社とお付き合いのある東京の中小企業など、数少ない例ですが、100%に近く台湾企業とのマッチングを成功させています。次世代を担う若手幹部を視察させることが重要
日本の中小企業の経営者の方が、自社であるパーツを作ることになり、しかもその仕様も決まっていれば、どこで生産するのがよいのかと考えます。日本は人件費が高いので、もっと人件費が安い海外で生産したいと考えます。しかし、海外には、さまざまな国があり「台湾と取引するのが1番良い」とはすぐに考えづらいと思います。人件費だけで言えば、以前は中国、今はベトナムなどASEAN諸国に移っています。その場合、多くの会社は高いお金を払ってコンサルタントに頼み、そしてかなりの数は失敗しているのです。それは、コンサルタントに頼むことが悪いのではなく、自分が主体となって判断できていないからです。
自分が主体となって判断できるようになるためにも、「COMPUTEX Taipei」などを視察し、また、そこに出展し、自分の目で見て感じることが一番重要です。私の経験で申し上げますと、経営者が視察することはもちろん重要ですが、次世代を担う若手幹部を視察させることはさらに重要です。そのような企業では、見聞を広めたその若手幹部が企業を牽引しています。
世界がどうなっているかを自分の目で確認
――最後になりました、読者にメッセージをいただけますか。
清水 技術者や経営幹部であれば、中小企業であっても、世の中の最新情報やその動きを知っておく必要があります。私が常々感じている中小企業の弱い点は、「今やっている仕事が上手くいけば、このまま飯を食っていける」と思い込んでしまうことが多い点です。もう、そのような時代ではありません。では、そのためにはどうすればいいのでしょうか。
1つの方法は、インターネット経由で、定期的に出ている新聞、専門雑誌等で技術情報を入手することだと思います。しかし、それは文字だけの話でかつ客観的な情報なので、それだけでは不十分です。実際に、自分の目で、耳で最新情報を得る必要があります、そのためにはセミナーや講演を聞きに行く必要があります。地方の方は、東京に出てくることは大変ですが、首都圏の人は、東京で開催しているセミナー、講演会に容易に参加することができます。それも大切なことです。また、日本の展示会であれば、地方の方も、インターネット等で速報やレポートを見ていれば参加できなかったとしても、各社日本語で発表しているので、充分に理解できます。
しかし、それでもまだ不十分なのです。大企業に限らず、中小企業でも、世界がどうなっているのかは、やはり自分の目で、出かけていって確認する必要があります。アメリカ・ラスベガスでもドイツでも大きな国際見本市や国際博覧会はやっています。しかし日本から行くには遠すぎます。もっと身近にと思ったら、台北の「COMPUTEX Taipei」に出かけて行くのも1つの方法だと思います。
近場で高いレベルの国際性に触れるチャンス
「COMPUTEX Taipei」の参加申し込みを事前にすると、メールでさまざまな案内が届きます。そのなかにマッチングミーティングのスケジュールなどの案内もあります。そのようなものを積極的に活用すると良いと思います。通訳が必要である場合は、希望もできます。行く前に問題意識をしっかりしておけば、大きな実りが期待できます。中小企業の経営者も、将来自社を担う若手技術者を積極的に送り込む検討をしてほしいと思います。近場で、高いレベルの国際性に触れるチャンスでもあるからです。
ITを学ぶ学生にとっての国際見本市入門編
学生や若い方は、私は常々申し上げているのですが、狭い日本だけでなく、見聞を広げるためにも、できるだけ早く海外に出る機会を持つべきだと思います。
台北の「COMPUTEX Taipei」は日本からわずか3時間程度なので、とくにIT関連を学ぶ学生や若い方にとっては、国際見本市の入門編としては最適です。世界中から情報を持った技術者が集まってくるので、意見交換などにも有意義な場です。観光だけで海外に行くのではなく、将来的に有意義な視察も兼ねてというのも面白いと思いませんか。(了)
【金木 亮憲】
<プロフィール>
清水 則之(しみず のりゆき)
公立大学法人名桜大学名誉教授、エドノール・インスティチュート代表。早稲田大学理工学部卒業後、1971年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。IBMシステムセンター、IBM東京基礎研究所、IBMヨーロッパネットワーク研究所(ハイデルベルグ)、IBMパロアルト研究所(シリコンバレー)に勤務。在社時代は主に汎用コンピュータ導入前テスト、ネットワークプロトコルの研究、金融系ネットワークシステムの構築などに従事。2003年から2011年まで名桜大学教授・国際学群長。研究分野はネットワークプロトコル、ディスタンスラーニング、医療情報学。情報処理学会シニア会員。
著者・訳書として、『グループウェア』、『インターネット電話ツールキット』など多数。関連キーワード
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