韓国経済ウォッチ~韓国自動車産業の三重苦
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国の自動車産業は現在、「為替レート」「高い労働人件費」「環境規制」という三重苦に苦しめられている。このような悪材料は業績にも鮮明に現れ始め、政府をはじめ関係者の多くは、韓国自動車産業の将来を懸念している。
しかし今こそ、いつも鋭く対立してきた、韓国の自動車産業が抱えている労使問題を解決すべき時期でもあると、専門家は口をそろえる。実際、日本もドイツも労使問題で悩んでいた同じような時期があり、労使がうまく妥協点を見出すことによって、今日の成長に至っている。その反面、イギリスは労使問題をうまく解決できず、自動車車産業が凋落を経験した事例もある。韓国は下手をするとイギリスのようになりかねないと、業界では警鐘を鳴らしている。現在、韓国の自動車産業はウォン高、労働人件費の上昇、環境規制の強化によるコストの増加で、深刻な危機に瀕している。
韓国の自動車産業は70%を輸出に依存しているだけに、最近の円安とユーロ安による相当価格競争力の低下は、深刻である。それにロシア、中南米などの新興国市場さえも、景気低迷で需要が落ち込んでいる。
現代自動車とキア自動車のアメリカ市場の占有率は2012年には8.7%であったが、去年は7.9%になり、市場シェアを落としている。さらに、国内市場でも外車の市場シェアは、ジワジワと増加傾向にある。もう1つの要因である増加し続ける労働人件費は、韓国自動車産業が抱えている宿願でもある。韓国の自動車メーカー5社の去年の平均賃金は9,234万ウォンで、2000年の平均賃金3,215万ウォンと比べると、ほぼ3倍近く増加したことがわかる。09年以降の人件費の年平均増加率は、日本はマイナス6.6%、アメリカは0.1%であるのに対して、韓国は66%を記録している。
上記の要因に加えて、環境規制の増加もコストの上昇要因で、韓国自動車産業の重荷になっている。韓国の自動車業界の規制には、排出権取引制を筆頭に、有害排気ガスの規制、平均燃料消費効率の規制、平均温室ガスの規制、自動車リサイクル規制、新化学物質の規制など、いろいろな規制がある。
なお、韓国には上記のような規制があるが、アメリカと日本はこのなかで3つだけを規制している。それからヨーロッパでは、上記のなかで平均燃費の規制は存在しない。韓国自動車産業は、重大な岐路に立たされている。まず、為替レートの問題を解決するためには、過去に日本の自動車企業がやってきたように、骨を削るような努力を重ねて技術を開発したり、コストを削減する道しかない。
それから、韓国自動車産業が早急に取り組むべき問題は、労使の妥協による賃金問題の解決である。会社が雇用を保証する代わりに、労働者は賃金上昇を抑えることに協力することだ。1970年と80年代にイギリスは労使問題を解決できず、人件費の上昇を放置したことで、自動車産業の凋落を招いている。
最近、オーストラリアでも高賃金に耐え切れず、GMとトヨタはその市場から撤退している。韓国も高賃金で、このような事態を招きかねない状況になりつつある。韓国自動車産業は日本とドイツの歴史的な教訓から学んで、度を過ぎた自己主張より、労使妥協を導き出す知恵が必要な時期である。
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