2024年11月21日( 木 )

ヤマダ電機、船井電機の「FUNAI」テレビを独占販売の意味(後)

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崖っぷちの船井電機に救済の手

 船井電機(株)の創業者、船井哲良・取締役相談役が再建策として決断したのが、国内テレビ市場への回帰だ。これまでの北米向けの低価格のOEM(相手先ブランド)生産から、国内向けの4Kなど高品質な自社ブランドで勝負することにした。

 船井氏がビジネスパートナーとして組むことにしたのが、(株)ヤマダ電機の創業者、山田昇会長兼取締役会議長である。両社の新製品発表会で代読された、船井氏の「手紙」にはこう書かれている。

〈30数年前に東京フナイとして国内販売していた時期があり、日本全国の70ほどの家電量販店のうち大手40~50件と取引していた。当時のヤマダ電機は、激戦地の北関東を拠点としており、山田社長は“北関東の風雲児”として名を馳せていた。その時から一味違う企業と感じていたが、いまや2位を大きく引き離す日本を代表する家電量販店になった〉

 船井氏の「手紙」を受けて、山田氏は次のコメントで応えた。

〈日本市場のテレビにおいては、ヤマダ電機は25%のシェアを持っている。(FUNAIテレビは)17年に5%のシェアを取る。日本のテレビ市場は縮小しており、かつての1,000万台から500万台まで下がっている。しかし、その500万台でも25万台。その最低ラインでも、(船井電機は)利益創出できる。さらに20%というシェアも可能と考える〉

 両社は、11年前の2006年にもテレビの販売で提携したことがある。当時は船井側の供給機種が少なく、提携は短期間で立ち消えた。「FUNAI」ブランドは一度使用を中止していたが、今回、ヤマダ電機で独占販売するのを機に復活させた。今回、2度目の挑戦である。

 では、山田氏が船井電機と提携した意図は何か。崖っぷちに立たされている船井電機の創業者、船井哲良氏に救済の手を差し伸べたということだ。サラリーマン社長ではできない芸当である。

有機ELテレビで反転攻勢に出る

 ヤマダ電機の頂点は11年3月期。売上高は2兆1,532億円、純利益は707億円であった。その後は急落。山田氏は13年に社長に復帰すると、15年に不採算の60店を閉め、「量から質」へと転換した。16年4月、再建のメドがついたことから、山田氏は会長兼取締役会議長に就き、後任の社長に桑野光正氏を起用。後継者と目されていた子息の山田傑(すぐる)取締役は「その任にない」として、その年の株主総会で退任した。

 17年3月期の売上高は1兆5,630億円と前期に比べて3%減ったが、純利益は345億円と14%増えた。業績が底を打ったことで、攻勢に打って出る。子会社の(株)ベスト電器を株式交換方式により7月1日付けで完全子会社化する。ベスト電器は6月28日付で上場廃止になる。船井電機との提携も、反転攻勢の一環だ。

 2020年の東京五輪を前にしたテレビの買い替え需要は、より鮮やかな色彩を表現できる有機ELテレビの人気が高まるのは必至。有機EL商戦でトップシェアを確保し、船井電機の黒字転換に寄与するというシナリオだ。
 家電各社は、価格競争の再現で消耗戦を陥ることを警戒している。

(了)

 
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