2024年12月24日( 火 )

市民、女性、若者を覚醒させた採決強行!(4)

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法学館憲法研究所所長・弁護士 伊藤 真 氏

日本国憲法は徹底した恒久平和主義をとる

 ――「平和」は簡単なようで難しい概念です。当シリーズでもさまざまな見識者の方からご意見をおうかがいしました。先生は、「積極的非暴力平和主義」をご提唱されています。

hinomaru1 伊藤 日本国憲法は徹底した「恒久平和主義」をとっています。私はこの考えを「積極的非暴力平和主義」と呼んでいます。これを示しているのが、前文と憲法9条です。
 前文第2段には「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」とはっきり書かれています。
 専制政治や奴隷政治、また他国への圧迫や偏狭なナショナリズムをなくす方法の1つとして、武力を使って戦争を仕掛ける方法もあります。イラク攻撃はその典型で、現在もアメリカが多く行う方法です。

 しかし、そうすることで、たとえ専制と隷従、圧迫と偏狭なくすことができたとしても、その手段として武力を使ってしまっては、決して名誉ある地位を占めることはできません。紛争が起こった後で軍事介入してそれを解決しようとする対症療法ではなく、むしろ紛争の原因をなくすための協力をするという、いわば根本治療を国際貢献の柱にする方が、世界から認められるはずです。

【日本国憲法前文】第2段
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

できないのは、「無能である」ことの証明である

 一方、憲法9条には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と書かれています。つまり、軍事力を手段として奪ったうえで、「非軍事、非暴力によって、世界にどう貢献をできるかを考えなさい」と憲法は政治家に命じています。政治家が「平和構築」をする手段を憲法が限定しているのです。私の申し上げた「積極的非暴力平和主義」は憲法が政治家に命じていることなのです。

 よく政治家の方は、「国民の命と生活を守ることが政治家の責任です」と言います。そのこと自体は正しいと思います。しかし、それを憲法の枠のなかで実現するのが政治家の使命、仕事なのです。それができないのは、単に「自分が無能である」ことを証明しているに過ぎません。
 もし、それが本当に無理というのであれば、主権者である国民に信を問い、「今度は拡げたこの枠内でやりなさい」(憲法改正)と認めてもらわないといけません。

【日本国憲法9条】
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

憲法のレベルは、国民のレベル以上にはならない

 ――なるほど、主権者である国民の方こそ、しっかりしないといけませんね。

 伊藤 その通りです。国民主権なので、憲法の力は国民の力です。しかし、ちょっと逆説的な言い方をしますと、「その国の憲法のレベルは、その国の国民のレベル以上には成りえません」と言うことができます。

 普通は“法”と名のつくものであれば、たとえばスピード違反もそうですが、捕まって罰金がとられます。しかし、憲法99条で、政治家等に尊重し擁護する義務は負わせていますが、義務に違反しても罰金も法的制裁も、何の処罰もありません。

【日本国憲法第99条】
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。

「こんな政治家はいらない」とお払い箱にする

 国民が次の選挙で、「こんな政治家はいらない」と落として、お払い箱にするしか方法がありません。これは、なぜかと言いますと、憲法というのは、自立した市民が前提となってできているからです。だからこそ、政権交代が起こります。アメリカを含めて、欧米先進国で、憲法に外れた行為を政治家がして、それを許す国はただの1つもありません。

私たち国民が税金で、人殺しに加担すること

 最後に私は個人的には、どのような理由があっても戦争には反対です。それはどんな理由をつけても、戦争は人殺しだからです。日本が戦争をすることになると、私たち国民が税金で、人殺しに加担することになります。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
itou_pr伊藤真氏(いとう・まこと)弁護士(日弁連憲法問題対策本部副本部長)
 1958年生まれ。1981年東京大学在学中に司法試験合格。1995年「伊藤真の司法試験塾」(現「伊藤塾」)を開設。現在は塾長として、受験指導を幅広く展開するほか、各地の自治体・企業・市民団体などの研修・講演に奔走している。法学館憲法研究所所長。立憲主義の破壊に反対する『国民安保法制懇』の設立(2014年)メンバー。
著書として、『憲法の力』(集英社新書)、『なりたくない人のための裁判員入門』(幻冬舎新書)、『中高生のための憲法教室』(岩波ジュニア新書)、『憲法の知恵ブクロ』(新日本出版社)、『けんぽうのえほん あなたこそたからもの』(大月書店)など多数。

 

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