2024年12月22日( 日 )

社会保障を整え、安心して若者が集う業界へ

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社会保険等未加入対策の推進等に関する説明会(福岡)<

社会保険等未加入対策の推進等に関する説明会(福岡)

 建設業における人手不足、若者の入職が進まない理由の1つに、社会保険の未加入問題が存在する。現場での事故、不意の病気やケガによる休職、退職を余儀なくされてしまう可能性はゼロではない。ましてや、屋外で、高所で、重量物を運ぶ、渡す作業など他業種に比べて、事故の確率は高いと言っていいだろう。労働災害の統計を見てみると、全産業の死傷者数は2014年度11万9,535人に対し、建設業は1万7,184人(14.3%)。死亡者は全産業1,057人に対し、建設業377人(35.6%)となっている。いずれも高い割合だ。そのときの保障、また引退した後の老後の保障がなければ、やはり職業としての魅力は半減してしまうのも当然だ。

 現在の社会保険加入状況を見てみよう。14年10月調査の公共事業労務費調査における社会保険加入調査結果を見ると、企業別の加入率は、雇用保険では96%、健康保険では94%、厚生年金保険では94%となっていることから、企業別ではほぼ加入が確認できている。労働者別では、雇用保険で79%、健康保険で72%、厚生年金保険では69%に留まっている。3保険未加入者が17%、すべて加入している労働者は7割を下回っている。これは公共事業における調査であることから、民間工事などを手がける場合はさらに加入率は低下すると見てよいだろう。社会保険加入状況の推移を見ると、11年10月の調査から加入率は上昇傾向にあり、製造業相当の9割以上に、少しずつだが近づいている。とはいえ、企業別・労働者別でも共通しているのが、元請け企業と比較して、高次の下請け企業の加入割合が低い傾向にあること。実質、現場作業に当たっている下請けで未加入が目立っており、万が一の事態を考えると数字以上に深刻である。

 社会保険未加入対策として、まず行政によるチェックや指導を行ってきた。12年7月以降、経営事項審査における減点幅を拡大、許可更新時に加入状況の確認や指導。さらに許可更新時に加入指導を行っているが、16年1月以降に更新期限を迎える許可業者については、前倒しで指導を実施することになっており、事前通知が届く該当企業は注意したい。

 国交省直轄工事では、現行下請金額の総額が3,000万円以上の工事(建築一式工事は総額4,500万円)において、一次下請を社会保険加入企業に限定しているが、15年8月以降は3,000万円未満でも同様の措置を取る。一次下請業者となるためには、社会保険加入が必須となり、加入率の上昇を促す。

 現在、元請け企業から下請け企業に対する見積条件に、法定福利費を内訳明示した見積書の提出を明示している。社会保険加入の鍵を握る法定福利費を見積書に算入することで、下請け企業は資金的余裕が生まれ、社会保険加入促進につながる。

 このような取り組みを経て目指すのは、17年をメドに、企業単位では許可業者の加入率100%、労働者単位では製造業相当の90%以上である。

【東城 洋平】

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