2024年11月24日( 日 )

中国経済新聞に学ぶ~元切り下げ「通貨戦争」新局面へ

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china 中国は11日、人民元の対米ドル相場の基準値を1ドル=6.2298元と公表し、前日の6.1162元から1.9%元安に設定した。この措置について中国側は「為替市場化への第一歩」と説明しているが、アベノミクスの円安効果を見て、元安で輸出を押し上げ、経済成長を進めるための措置であると見られる。

 人民元の対米ドル相場切り下げを実施したことを受け、米財務省は「全体的な影響を判断するには時期尚早」との考えを示しつつ、中国の人民元改革に圧力をかけ続ける構えを見せた。米国のネットユーザーからは、「たった2%なのか?」「中国の状況はかなり悪いな。中国製品の不買運動をして、米国製を増やすようにしよう」「人民元は価値のないものになっていっている」といったコメントが寄せられている。

 しかし、人民元基準値連続下げで4年ぶりの安値をつけたことで、世界の株価全面安となった。12日、東京株式市場で、日経平均株価が急落した。一時前日終値比420円近く下げ、2万300円割れ寸前の水準となった。2日連続での中国人民元の基準引き下げで、日本企業の輸出競争力などが低下するとの懸念が急速に強まった。

 中国関連株の代表であるコマツや日立建機、ダイキン、小松製作所など空調・建設機器やコーセー、資生堂など化粧品、ファーストリテイリング(ユニクロ)などの流通といった中国経済への依存度が高い銘柄を中心に売られ、ほぼ全面安となった。人民元安が一段と進むと、中国に進出する日本企業の業績は悪化しかねない。SMBC日興証券は、人民元引き下げ(1.9%)による日本企業への影響額を試算した。中国現地法人の経常利益は全産業ベースで444億円減少するという。

 米株式市場でも12日、ダウ工業株30種平均が大幅に下落し、前日比212ドル(1.2%)安の1万7402ドルで取引を終えた。中国の景気減速懸念や事実上の人民切り下げを受け、中国での売上比率が大きい米企業の業績に対する不安が高まった。また、ニューヨーク原油先物相場が1バレル42ドル台半ばと5カ月ぶりの安値となった。このほか銅、アルミなど資源価格が軒並み下落、資源銘柄を中心に急落した。

 しかも11、12、13日と連続で元が切り下げられ、3日間の対ドル下落率は4.6%に達した。市場はまたしても中国に翻弄されている、と市場関係者らは嘆いた。「中国は、国内景気の減速を食い止めるため、自国通貨の価値を下げ(人民元安)、輸出企業の業績アップを狙っている。アベノミクスの円安誘導策とそっくりだが、中国は管理変動相場制を採用しているため、日本以上に為替コントロールが利く」と批判の声も強かった。

 人民元ショックでアジア各国の通貨が大幅安の展開となるなか、急速なドル高が進んだ米国が反発を進めている。来年に大統領選挙を控える米国はドル高への警戒感が強く、米中通貨戦争に発展する恐れも浮上する。習主席は9月下旬に来米してオバマ大統領と会談するが、米経済誌ウォールストリート・ジャーナルは「今回の切り下げは緊張感を高める公算が大きい」と指摘した。

 しかし、中国人民銀行研究局チーフエコノミストの馬駿氏は、中国経済新聞の取材に対し、「人民元が今後継続的に下落すると見るべきではない」と断言した。馬駿氏によると、「米国の利上げが迫る中、最近ロシア、ブラジルなどの為替レートが新たな下落圧力に直面している。中国も同じ道をたどるのではと多くの市場関係者が懸念しているが、私はこの懸念は不要と考える。多くの国をまたいだ実証研究の結果によれば、1国の為替レートが大きな下落圧力に直面しているかどうかは、その国の経済のファンダルメンタルズによって決まる。資本勘定の開放によって、中国の市場参加者の金融資源の世界的な配置の自由度と柔軟性が高まり、より多くの機構と住民が対外投資を実施できるようになる。しかし一方で、資本勘定は双方向に開放されるため、国外資本による対中投資も増加する。たとえば、欧州諸国の国債の多くは収益率が1パーセントにも満たないが、中国の債券市場のリスクフリーレート(5年債)は3.2%前後だ。低リスクの金融債や企業債も利益率が3.5~4.5%に達する。中国の債券市場は欧州の投資家にとって大きな魅力を備えている」と強調した。

 人民銀の張暁慧総裁助理は13日の記者会見で、基準値と市場実勢の乖離の是正は基本的に終えた」と明言した。基準値の大幅な切り下げは、もはや必要ないとの考えを示した発言だ。易鋼副総裁もこう力説した。「元相場を10%切り下げて輸出を刺激するといった見方は事実無根だ」。切り下げは元安誘導による輸出支援が狙いの一つであるのは明らかだが、それを真っ向から否定してみせた。

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