2024年11月23日( 土 )

安保法制に使われる「積極的平和主義」の本来の意味

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 19日、東京都六本木で「安保法制、憲法改正、積極的平和主義。日本はどう国際平和に貢献すべきか?」をテーマに、「平和学の父」で「積極的平和」の提唱者であるヨハン・ガルトゥング博士とジャーナリストの田原総一朗氏の対談が開催された。「積極的平和」とは何か。改めて意味を見つめ直し、これからの日本に必要な方向性を語り合った。

北アジア地域共同体をつくるべき

安保法制について語り合う田原氏とヨハン博士<

安保法制について語り合う田原氏とヨハン博士

 集団的自衛権の行使容認などを含む安保法制。その裏付けの思想となる「積極的平和主義」という言葉を安倍首相はしきりに発するが、本来の「積極的平和」とは何かを改めて問うべく、福岡市のユナイテッドピープル(株)の関根健次代表が企画した。
 田原氏は開口一番、「私は安倍さんが何をやろうとしているのか、よくわからない。安倍さん自身もよくわかってないはず」と語った。
 そのうえで、「自民党が1955年にGHQが作った憲法を改正することを目標にしたが、その後も改正しないままだった。やがて冷戦時代に日米安保条約が交わされた。日本が他国から攻められたらアメリカが守るが、日本は守らなくていいという片務条約だった。冷戦が終わると、必ずしもアメリカは日本を守る必要がなくなってきた。安保法制は憲法改正しないで解釈改憲によって双方ともに守る双務条約となる。このままいくと9月中旬には参議院で可決・成立するだろう」という。

 一方、ヨハン博士は「安保法制は日本のためにはならない。危険な状態になる。集団的自衛権を容認すれば、アメリカとスクラムを組んで世界中で戦うことになる。アメリカは1805年以降、世界中で248回もの軍事介入を行い、世界記録保持者だ。オバマ政権以来、138国で軍事介入している。だが、実はアメリカは1953年の朝鮮戦争で勝利を収められず、その後も敗北を繰り返して地位が落ちていっている。そんな国と日本は運命を共にしていいのか」と訴えた。

 ヨハン博士の提唱する「積極的平和」は、「安倍首相の意図と私の提唱とは大きくかけはなれている。私が提唱したのは、積極的な近隣諸国との調和により平和を求めることだ。そこに軍事同盟は必要としない」といい、その上で、「北アジア地域が均衡のとれた協力関係を築き、6カ国だった時代のヨーロッパのECを参考に、中国、台湾、韓国、北朝鮮、日本、極東ロシア、モンゴルで北アジア地域共同体をつくるべきだ」と提言した。
 「共同体は一筋縄ではいかない」と田原氏は反論したが、安保法制反対、近隣諸国との調和という点に関しては意見が一致していた。

 田原氏は「安保法制の最大の問題は、武力行使により日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があると判断するのは総理だが、肝心の総理自身に対する歯止めが何もないことだ」と話す。
まずは、安倍首相のいう「積極的平和主義」が、提唱者が意図した本来の意味とは大きくかけ離れて使われていることを認識しておく必要がある。

【大根田 康介】

 

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