米中間選挙後も混乱と分断が加速するアメリカ(中)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸「アメリカン・ドリーム」の終焉
アメリカで進む貧富の格差はすさまじく、アメリカ政府が発表した1989年から2021年までの所得分布のデータを見ると驚かされます。それによれば、アメリカ人の総所得は21年の第2四半期で134兆ドル。その7割以上を上位2割の富裕層が占めています。さらにいえば、トップ1%の超富裕層が全体の3割の資産を押さえているのがアメリカなのです。
これら超富裕層に属するアメリカ人は企業の経営者が多いのですが、潤沢な資金を使い政治家への影響力を行使することをはばかりません。自分たちにとって都合の悪い法案はいとも簡単に廃案にしてしまい、都合の良いように政治や国家を左右するわけです。
たとえば、ホームレス救済法案などとして27億ドルの予算が計上されていましたが、まったく貧困層には行きわたっていません。しかも、アメリカの財政赤字は巨額で、第3四半期の利払いだけで1,840億ドルに達しています。年間にすれば7,300億ドルの負担です。これは国防予算7,200億ドルを上回る額なのです。
どこから見ても、アメリカという国家は財政破綻しています。戦後アメリカが超大国として君臨できたのは、金・ドル本位制を定めたブレトンウッズ体制のおかげです。ドルが国際機軸通貨として位置づけられたことによって、アメリカはドル紙幣を刷ればすべてを賄うことができたからです。そんな「アメリカン・ドリーム」の時代はもはや消え去りました。
こうした状況下で、トランプ前大統領は政権の奪還に向かって動いていました。中間選挙で自らの支持する上下両院議員や州知事を増やし、24年の大統領選に弾みをつけようという戦略です。10月22日にテキサスで行われた共和党候補者の応援演説でも強気一辺倒でした。
「前回も前々回の大統領選挙でも勝ったのは自分だった。今のバイデン政権はフェイクでしかない。そのため、アメリカは経済も社会もボロボロだ。これを立て直すのは自分がホワイトハウスにカムバックするしかない」。
さらにメディアの取材に答えて「共和党には大統領選に名乗りを上げそうな人物は多数いるようだが、自分が出馬宣言をしたら、皆、辞退するすると約束してくれている」とまで踏み込んだ発言をしています。
対するバイデン陣営ですが、選挙前は厳しい情勢に追い込まれていました。バイデン大統領が、ホワイトハウスの前庭でテレビの取材を受けたときの発言で話題騒然となりました。年齢についての質問に、バイデン大統領は何と「明日には死んでいるかも」と弱気な回答をしたからです。「自分は運命論者。明日の命は分からない」と補足説明していました。
最大の懸念はトランプ氏の「暴走」
悪気はないのでしょうが、自分の発言がどのような結果をもたらすのか、思いが至らないのでしょうか。明日にもこの世から消えるかもしれないと思っている大統領と、俺しかアメリカを再生できないと考えている前大統領の一騎打ちです。「勝負あった」と多くが思ったに違いありません。
もし、バイデン大統領が本当に明日、命を失うことになれば、副大統領のカマラ・ハリスが政権を引き継ぐことになります。先般の安倍元総理の国葬に参列し、その足で韓国を訪問し、板門店を視察した際に韓国と北朝鮮を平気で言い間違えたハリス副大統領です。
攻めどころ満載となるわけで、トランプ前大統領とすれば、バイデンでもハリスでも、どちらが相手でも楽勝と踏んでいたようです。しかし、事実は小説より奇なり。バイデン大統領の率いる民主党が上院を制し、バイデン大統領は何とか首がつながったようです。
(つづく)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連キーワード
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