2024年12月22日( 日 )

米中間選挙後も混乱と分断が加速するアメリカ(後)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

最大の懸念はトランプ氏の「暴走」(つづき)

トランプ支持者 イメージ    今回の中間選挙ほど、アメリカ国家の分断を浮き彫りにした選挙はありません。トランプ前大統領の唱える「奪われた大統領選挙」に同調し、「2年前の選挙ではトランプが勝っていた」と主張する「トランプ派」が200人も立候補したからです。

 結果として、共和党のシンボルカラーである「赤い波」は起きなかったわけですが、トランプ前大統領に言わせれば「自分の推薦した候補は大半が勝利した。自分がこの選挙結果に不満足で怒っているとの報道があったが、真っ赤な嘘だ。民主党が操るメディアはフェイクばかり垂れ流している。共和党は大勝利した」とのこと。

 とはいえ、バイデン大統領も今回、民主党が思った以上に議席を減らさなかったことで自信を回復したようです。なぜなら、「家族とも相談し、年明けには2024年の大統領選挙への再出馬を決めることになる」と強気の姿勢を打ち出していますから。

 そんな中、最も大きな懸念材料はトランプ氏の暴走でしょう。相変わらず「ジコチュー・オーラ」をまき散らしています。このたびの中間選挙では上院での民主党の天下を許し、上下両院を「赤い波」で飲みつくすと吠えまくっていた前大統領は「憤懣やるかたない」ようです。そのせいか、あたりかまわず「怒りのミサイル」を連発しています。

アメリカの「終わりの始まり」

 最初の標的になったのは「フロリダのトランプ」と異名を取るロン・デサンティス州知事でした。

 今回の中間選挙では圧倒的な得票で知事に再選されており、共和党の次世代のホープと期待が高まっています。面白くないのは、今ではフロリダ州に住まいを構えるトランプ氏です。

 「あいつは大した玉じゃない。最初に立候補したとき、俺のところにお金の無心にきたものだ。地盤も金もない奴だったが、俺が助けてやったのでうまく行っただけのこと」。巷では「24年の大統領選の最有力候補」とまで持ち上げられている、44歳のデサンティス氏に対しての言葉です。トランプ氏は「俺の僕(しもべ)のような男に任すわけにはいかない。アメリカを立て直せるのは俺しかいない」と、見下しています。

 次の標的になったのはバージニア州のグレン・ヤンキン知事、56歳です。今回は再選期ではないため、選挙には出馬していませんが、24年の大統領選では有力候補として名前が出ています。

 そのヤンキン州知事について、トランプ氏は「あいつの名前は中国風だな。あいつが21年の知事選に出たとき、俺がMAGAを動員して選挙を勝たせたんだ。俺がいなければ、今のあいつはどこかの馬の骨と変わらない」と、好き勝手な発言を繰り出すばかり。とにかく「中国人のような名前」ということを理由に、かつて推薦し、応援した州知事の人格を否定するのです。

 同じ共和党としての仲間意識は微塵も感じられません。一事が万事。トランプ氏はナルシストの極みです。自分より注目を集めるような存在に我慢がならないのでしょう。そんなジコチュー氏が24年の大統領選への正式な出馬表明を行ったのですが、今回の中間選挙で「赤い波」を引き起こせなかったことで、責任転嫁のように同じ共和党の仲間をボロクソにけなすトランプ氏に、アメリカを団結させ、再生に導くことなどできるのでしょうか?

 ペンス元副大統領でさえ、「24年には、別のより良い選択肢がある」とトランプ氏を打ち消す発言を繰り出しているほどですから。こうなると、追い詰められたトランプ氏は非常手段に訴える可能性があり得ます。2年前は連邦議会の占拠で終わりましたが、ひょっとしたら、トランプ国の独立宣言をぶっぱなしてアメリカを二分する動きをさらに強めるのではないでしょうか。トランプ前大統領の復活が、自由な民主主義国家アメリカの終わりの始まりかも知れません。

(了)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

(中)

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