広告大手アサツーディ・ケイ絶体絶命!前門の英WPP、後門の米ベインに挟み撃ち(後)
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広告代理店国内3位のアサツーディ・ケイは、絶体絶命の窮地に陥った。世界最大の広告グループ英WPPと縁切りして、米投資ファンドのベインキャピタルに乗り換える。表門で虎の侵入を防いでいるときに、裏門から狼が侵入してくる。「前門の虎、後門の狼」の故事さながらの展開となった。
異常な高配当で懐をはたくADK
WPPグループはADK株を1,033万株保有している。ADKは99年12月期から16年同期までに支払った1株当たりの年間配当金は1,557円。WPPグループは160億円を得た計算。とくに超高額配当をフンパツした11年から16年までの6年間に132億円を手にした。濡れ手で粟のボロ儲けだ。
ADKとWPPは、ともに300億円で相手会社の株式を取得した。現在、WPPが保有しているADK株の時価総額はざっと398億円。すでに元は取れている。しかも高額配当でキャッシュを吸い上げる。こんなおいしい投資先はない。WPPがカネの成る木を手放したくないのも無理はない。
一方、ADKは最終利益以上の金額を配当するために、会社の資産を切り売りする。会社の資産はどんどん減っていく。連れあいのあまりの貪欲ぶりに堪忍袋の緒が切れて、離婚を決意したのが真相と言えるだろう。買収額1,517億円はADKの借金になる
では、再婚するベインはどうか。善意から手を差し伸べたわけではない。これで一儲けできると踏んで、ADKとWPPとのバトルに参戦した。
ベインは10月5日、(株)東芝の半導体子会社、東芝メモリ(株)を買収することについて、記者会見を開いた。ADKの買収を発表した3日後だ。経営が混乱した会社ほど、リターンが大きいと弾いている。
ベインのADK買収の手法はこうだ。ベインは直接、ADKを買収するわけではない。買い付け会社が1,517億円で買収する。買い付け会社は銀行からの借入金で賄う。ベインが出すのはせいぜい3分の1程度だ。
TOBが成立すると、買い付け会社とADKが合併。買い付け会社の借金1,517億円はADKに移る。ADKは借金が増えるだけ。ベインは、ADKの再上場の際、売り抜けて高額の利益を得る。
ADKを巡る、WPPとベインの攻防戦はどうなるか。TOBが成立せず、離婚できない場合、WPPなど大株主グループはADKの経営陣を総入れ替え。今後も、超高額配当を続ける経営者に首をすげ替える。
TOBが成立すれば、ADKはベインと再婚できる。その代わり、莫大な借金を抱え込む。どちらに転んでも、ADKにいいことはない。
「前門の虎、後門の狼」は、中国の古典『評史』の「表門で虎の侵入を防いでいるときに、後門から狼が攻撃してくる」という意味に由来する。ADKは、前門のWPP、後門のベインの挟撃に遭い、絶体絶命の窮地に陥っているのである。(了)
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