2024年12月23日( 月 )

「ふたつ星4047」の展望(後)

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運輸評論家 堀内 重人

並行在来線区間と大村線を含めた「ふたつ星4047」の展望

 西九州新幹線の開業にともない、並行在来線となる江北~長崎間は、JR九州の直営で経営されることは、今後の整備新幹線が開業するにあたり、並行在来線問題を考えるうえで、重要な視座を与えてくれた。

 JR化以降、新幹線が開業すれば、赤字必至の並行在来線をJRから経営分離しても良くなり、事実、北陸新幹線の高崎~長野間の開業を皮切りに、日本各地で並行在来線が切り離され、第三セクター鉄道が誕生して、輸送の分断が生じている。

 今回の江北~長崎間には、都市は諫早程度であるにも関わらず、JR九州が直営で運営するが、上下分離経営を採用して、インフラ部分は「公」が負担するだけでなく、電気運転を廃止して、架線を撤去した。

(写真5)ディーゼルエレクトリック駆動と蓄電池のハイブリッド車両、YC1
(写真5)
ディーゼルエレクトリック駆動と
蓄電池のハイブリッド車両、YC1

    列車頻度が少なく、ローカル輸送が中心になれば、架線や変電所の維持管理などのコストが嵩んでしまう。ましてや長崎本線の江北~長崎間は、有明海に面しているため、架線や架線柱が、塩害による劣化などが進む。またJR九州が導入しているYC1(写真5)という気動車は、ディーゼルエンジンで発電を行い、モーターを駆動して走行するため、実質的には架線のない電車である。長崎本線以外に大村線でも使用できるため、車両の効率的な運用という面では、望ましいといえる。

 西九州新幹線が開業後に、並行在来線となる江北~長崎間や大村線に、週末中心の臨時とはいえ、特急「ふたつ星4047」が運転されることは、並行在来線と大村線の活性化にもつながる。

 だが「ふたつ星4047」の種車は、製造から40年程度が経過した車両を改造したため、沿線が有明海や大村湾に面していても、窓枠とシートピッチが合致しない座席があり、眺望を台無しにしている。

 また現在の「ふたつ星4047」の表定速度は、35~36km/hであり、特急というには、恥ずかしいぐらいに遅い。急ぐことが目的ではないが、現状では速度が遅く、かつ眺望の悪い座席があるなど、設備面でも問題がある車両であるため、需要が見込めるのであれば、新造車を導入して置き換えたいところである。

 だが週末しか運転しない列車であれば、投資に対する費用対効果を考えると、難しいと言わざるを得ない。

 そうなると、JR四国などが新型の特急用気動車を導入したことで、置き換えの対象となる製造から30年程度経過した車両を譲り受け、マイナー改造を実施して投入する方法が考えられる。JR四国で置き換えられつつある車両は、振り子式であるから、曲線を高速で走行する性能が優れている。また車両1台あたり強力なエンジンを2基搭載しているため、急カーブが多くかつ急勾配も存在する長崎本線では、現在の車両よりもスピードアップも可能である。

 「特急」と名乗るのであれば、せめて表定速度は50km/hは欲しいところであると同時に、窓枠とシートピッチが合致しない車両では、具合が悪い。

 西九州新幹線が部分的に開業したのだから、「ふたつ星4047」を運転して、長崎本線や大村線の活性化を図ることは良い試みである。利用者が増えてくれば、毎日運行の定期列車に格上げを行うようにすると同時に、車両も新車を導入して、「ふたつ星4047」のグレードアップを図るようにしたい。

(了)

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