タクシー老舗の事業転換 問われる変化対応力(後)
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大稲グループ(稲員興産(株))
タクシーや不動産、建材販売などを手がける大稲グループ。60年以上の歴史を有するタクシー事業では、先進的な取り組みの導入などグループの主力事業として存在感を発揮してきた。しかしコロナ禍を経てタクシー事業会社を清算。ハイヤー会社へ事業を移管し、より付加価値の高いサービスの強化を打ち出している。ネットワーク形成や新会社設立など布石を打つが、激しく変化する外部環境のなかで対応力を発揮できるか問われる。
問われる不動産資産の活用法
グループの不動産事業の役割分担は大まかに所有の稲員興産と管理の大稲産業になる。ただし実際にグループが所有する不動産の名義はさまざまだ。稲員興産が所有するのはヤマダ電機駐車場の約4,600坪の千早土地や好立地の「101大稲ビル」、中央区赤坂のマンションなど。稲員興産の年間売上高(賃料収入など)は約2億円。借入金は6,300万円にとどまり負債のほとんどは預り保証金約34億円だが、現預金は約2,000万円に満たない。
グループ本部の8階建て「107大稲ビル」は、英一郎氏の個人名義で無担保だが建築後まもなく40年を迎えようとしている。「大稲大名パーキング」はマジメント・アイの所有名義で金融機関から担保設定がなされている。さらに福岡ハイヤーサービスの本社・車両基地は管理業の大稲産業の所有でこちらも銀行が担保設定している。その地続きで大稲自動車の旧社屋の土地・建物は英一郎氏が所有していたが、20年6月に売却している。
ザ・リッツ・カールトンなど有力顧客を獲得し、「大稲大名パーキング」を福岡リムジンサービスの拠点化できれば大きな相乗効果が期待できるが、一方で月間数百万円を稼ぎ出す賃料収入を犠牲にしなければならない。多くを都心の好立地に有するが一部は老朽化も進んでいる。将来展望や返済原資を見据えた活用方法を見直す時期にきている。
変化対応へのタイムリミット迫る
1957年に設立された大稲物産は当初飲料水や酒類販売目的から海砂販売に転じた経緯がある。振り返れば初代・稲員稔氏は炭鉱業が下火になると車社会化をとらえタクシーに進出し、2代目・大蔵氏は高度経済成長を追い風に不動産業で資産を形成した。時代背景や市場環境に合わせて起業・変化してきたのが大稲グループの特徴といえる。当代・稲員兄弟も変革に挑むが、出版業や人材派遣業など1人立ちできなかった新設法人も存在する。不動産賃料でやり繰りするオーナー業に落ち着くか、地場企業グループとして存在感を取り戻すか、通常タクシーから高質ハイヤーへの転換の成否が行方を左右する。
(了)
【鹿島 譲二】
<COMPANY INFORMATION>
稲員興産(株)
代 表:稲員 英一郎ほか1名
所在地:福岡市中央区大手門1-9-11
設 立:1964年3月
資本金:1,000万円
売上高:(21/12)2億243万円関連記事
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