2024年12月22日( 日 )

【2023統一地方選】福岡県南地域の県議選の行方

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定数減と決断できない市議

選挙 イメージ    統一地方選挙まで後実質2カ月となった。その前哨戦の首長選挙が行われているが、興味深い話を耳にした。

 従来、統一地方選前年の12月には動き出していたある県会議員に、まだ動きがみられないという。県政与党の重鎮であり、もちろん次期も出る予定だが、1月に入っても動きがない。統一選後半には市議選もあり、周辺の市議たちは気が気でない。県議を差し置いて、先に動くわけにはいかないからだ。別の地域の県議は、首長選挙との連動を考えてか、年明け早々に事務所開きを済ませている。「これは県全体の話。今回は南部が揺れますね」と関係者がいう。

 県南の中核市、久留米市から選出される県議の定数が6から5へと減った。昨年の条例改正により、久留米市とうきは市の選挙区が合区となったことを受けたものだ。うきは市には農業者団体の強固な地盤を持つ候補がいる。となると、残り4議席を争うかたちになる。昨年の久留米市長選挙に際して県議会副議長を務めた県議が辞職し、その後継候補として複数の市議の名前が挙がっていたが、まだ後継を立てられていない。久留米市長選で自民が分裂した経緯もあり、仮に当選しても自民党の会派に入れず、一人会派ではまともに質問する機会も得られないと、尻込みして決断できずにいるのだ。このまま後継候補を立てられず不戦敗となるのか。

見え隠れする重鎮の影

 隣の八女市は定数2である。現在、県議会議長職にある自民党県議団所属の現職と、農業者団体の推薦を受ける現職との保守系2議席を確保している。そこに、元八女市職員で立憲民主党から衆院選に出た人物が、戦を仕掛けた。連日、国道沿いに立つなど活発な活動を見せる。八女市には公務員労組の手堅い組織票があり、前回20年の市長選の投票結果から考えると、現職にとって大きな脅威となる。

 現議長は、家業は建設業だが、元県PTA会長も務め教育問題に熱心。八女市の現状に危機感をもつ。農業者団体の推薦を受ける現職は、2年前の補欠選挙において無投票で当選している。家業の製茶業を営む温厚な人柄で、高齢者を中心に熱い支持を受ける。県議会議員のなかで唯一、専業農家の出であり、同僚議員も「彼だけだからね、農家出身は」という。

 そうなると、気が気でないのが議長。地元関係者に聞くと、保守同士仲良く票を分け合うとはならないようだ。議長より年かさの重鎮のなかには、議長に不満を持つ勢力がいる。そこに割り込んできたのが立憲の候補。財政状況を心配する地元県議と、新庁舎建設などに執心の八女市長との間が微妙というから、動き次第で現職のどちらかが負けかねず、水面下では神経戦になっている。

 この八女市の動向と連動しているのかはまだ定かではないが、久留米・八女両市と接する筑後市でも、福岡県政に圧倒的な影響力を持つ現職に対抗馬が出現した。相手は、元市議で、筑後市副市長を務めた人。地元では、代理戦争との認識がある。一昨年の市長選では県議肝いりで自民党県連として推薦した候補を立てたが、現職が再選された。市議も現職を支持する者と、元議長を中心にした不満を持つ者とに分かれており、予断を許さない。

 八女・筑後の動きには、引退したはずの重鎮の影を指摘する声は多い。

【近藤 将勝】

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