立民ゆ党化の先兵役の維新 茂木幹事長の“二股維新活用”
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1月16日、維新関係者に衝撃が走った。読売新聞が1月13~15日に実施した世論調査で、維新の支持率が前月の6%から3%に半減したことを報じたのだ。2日後の18日にも同紙は「自民、維新へ接近図る 国会改革など一致 野党共闘にくさび」と銘打って支持率半減の世論調査結果を紹介、「国民幹部は『政策の異なる立民と組んだからだ』と冷ややかな見方を示した」というコメントを付加した。政策が食い違う野党第一党と第二党の“野合共闘”が、維新の支持率急落を招いた原因に違いないとの見方を示したかたちだ。
臨時国会で「二股維新活用・立民ゆ党化作戦」を仕掛けて成功、通常国会でも二匹目のドジョウを狙う自民党の茂木敏充幹事長の高笑いが聞こえてくるようだ。19日の時事通信の世論調査では、立民支持率も5.5%から2.5%に急落。両野党がそろって内閣支持率を超える急落ぶりを記録、結果的に岸田政権をアシストすることになったからだ。
先の読売新聞は、野党弱体化に成功した茂木幹事長の策士ぶり(二段階作戦)を次のように解説していた。
「(1月17日の維新幹部との会談後に記者団に対して)茂木氏は、維新が『身を切る改革』を掲げてきたことに触れ、『通常国会では国会改革で目に見える成果を上げられるように協力したい』と伝えた」
「茂木氏は18日には大阪市に入り、2025年の大阪・関西万博の会場を視察する。維新共同代表の吉村洋文大阪府知事、前代表の松井一郎市長が同行し、夕食を共にする予定だ」まず維新との関係強化を印象づけ、「維新思い」を強める立民を引き寄せるのが茂木幹事長の「二股維新活用・立民ゆ党化作戦」。そして先の読売の記事は、臨時国会での成功体験に基づくとも紹介していた。
「(18日予定の万博会場の視察などで)自民が維新に秋波を送る背景には、先の臨時国会で、高額寄付被害救済・防止法をめぐり、国民民主党に加えて維新も取り込むことで、立民を賛成に引き込んだ成功体験がある。憲法や安保、原発政策では、維新は立民よりも自民と立場が近く、通常国会でも野党の足並みの乱れを誘いたい考えだ」
何と巧みな野党弱体化(立民ゆ党化)作戦だろうか。本命(自民)がいるのに二股が得意な女性(維新)と別れたくない男(立民)がすり寄ってくるという恋愛ドラマの一場面と重なり合うものがある。そこで1月18日、通常国会での提携(共闘)継続で合意した泉健太代表との会談を終えて記者会見に臨んだ馬場伸幸維新代表に、立民切り崩しの先兵役をしている自覚があるのかと聞いてみた。
──「野党共闘にくさび」という見出しの読売新聞の今日の記事があって、要は、今回の(立民との)提携は、立民の切り崩し工作の先兵役として維新が振る舞うと。自民党が救済法案で維新を取り込んで賛成に回ったことで立民も「ザル法」と言われているのに賛成に回ったという「成功体験」の第二弾として、今回の(立民との)提携が捉えられるのではないかと思うが、実際、立民は「防衛増税(反対)」とは言っても防衛費倍増には正面から批判していないと。すでに維新に取り込まれている状態になっているのが、こういう効果を狙った提携と位置付けていいのか。
馬場 横田さんらしい見方だと思うが、(茂木幹事長との面談後の)昨日の会見でも言ったが、我々は「与党でも野党でもない。国民の側に立っている政党だ」と自負しています。いまおっしゃった救済法案の件も、通常国会で議論をしようという目論見を与党側はもっていたという情報をキャッチしたなかで、「一時も早く、法案成立をはかるべきである」という我が党の考え方に基づいて、立民にも自民にも呼びかけをして成立したのだから、こういうことを国民は求めているのではないか。「結果を出して政治を前に動かしていく」と思っていられる国民の方がほとんどだと思う。
救済法案に対する評価は真っ二つに割れている。12月23日の本サイトの記事「れいわ新選組、与野党4党談合決着の救済新法に反対」で指摘した通り、与野党4党(自民・公明・立民・維新)は賛成したが、共産党やれいわ新選組は反対、被害者救済に長年取り組む全国弁連も「ほとんど役に立たない」と酷評した。私も当然、「やっている感」演出に自己満足する与野党4党の肯定的評価ではなく、旧統一教会と法廷闘争もしてきた全国弁連の否定的評価が妥当と判断、上記の批判記事を書いたのだ。そこで、この見解の違いについても補足説明をしたうえで、安保三文書についての質問を続けた。
──全国弁連(霊感商法対策弁護士連絡会)、被害者救済に取り組んでいる弁護士は「ザル法だ」「あってもなくてもあまり変わりはない」という評価を下して、結局、与野党四党のやっている感演出の談合決着という見方も成り立つと思うが、今回の安保三文書に関しても「身を切る改革」「行財政改革」というが、防衛費倍増の一番ムダな部分、米国兵器爆買いとか辺野古見直しとか防衛関連予算にメスを入れる最優先課題をすっ飛ばして、各省庁のムダとか議員定数削減とか明後日の方向に行っていると思うのが、こういうことをやりたいために立民と提携しているのではないか。野党がやるべきことをそっちのけにして自民党にすり寄るために、この(立民との)提携がある、存在をしている、役割をはたすように見えるが、そういう見方はおかしいのか。
馬場 それは横田さんの見方だ。だから救済法案についても、いろいろな点数をつけてもらっているが、法案がない状況よりも今の法案でも成立をした重要性が優先されると思う。防衛(安保)三文書についても足らざる部分はあると思うが、だから我が党は足らざる部分を、我が党の考え方として岸田総理に届けた。防衛装備品をそろえていくのは重要だが、現実問題として国民の命を守っていくことについて、議論を深めていかないといけないと思うし、その場が国会だと思うので、そのなかで各党が相互理解を深めて、同じ方向を見れば、スピーディに動き出すのではないかと思う。
──確認だが、(維新と立民は)米国兵器爆買いとか辺野古見直しにもメスを入れる立場で間違いないか。
馬場 そういったものは政府が決めているわけだから、意見はいうが、あまり度を越えたことをすれば、国民の目があるから、次の選挙で判断されるのではないか。
「防衛増税」には反対しても防衛費倍増自体にメスを入れようとしない維新の「ゆ党(政権補完勢力)路線」が浮き彫りになったが、最後に支持率半減についても聞いてみた。
──今日(18日)の読売新聞には、維新の支持率が6%から3%に半減したと。これは、立民との連携強化で「政策が違うのに数合わせの野合ではないか」とか「維新立憲党」と呼ばれるような事態に陥った結果ではないか。馬場さんが代表を辞める可能性がまた高まったのではないかと思うが……。
馬場 (通常国会でも立民との)そういった協調をする以上は、結果は出さないといけないと思う。臨時国会の協調も8項目の政策合意については、何かしらの前進であるとか結果を出すというようなかたちが取れた。なかなか国民に伝わっていないのは、我々のPR不足なのかもしれないが、支持率のために我々は政治をしているわけではないので、「国家国民のためになれば、いい」という覚悟をもっている集団が本来の維新という政党だから、これからも結果を出すことにこだわって努力をしていくことになると思うし、それを続けていけば、国民も「ああ、そうだったのか」と理解するようになるのではないかと期待したいと思う。私は、私の身はいつでも捨てる覚悟があるので、辞めなければならない時が来れば潔く身を引く覚悟はできている。
──泉代表も同じように退路を断つべきだと思わないか、(統一地方選における代表続投の)目標を設定して(両代表の)連帯責任ということで。立民も維新と組むことで票を減らすリスクを負うわけだから、「(両党)共に統一地方選で目標を設定して(未達なら代表を)辞める」という覚悟を示した方がいいような気がするが、「泉代表の退路を断つべきではないか」という見方についてはどう考えるのか。
馬場 泉代表だけではなくて、政治家は潔く身を引くことを腹のなかに入れて政治の道に入っていくべきだと思うから、泉代表は泉代表の考えがあると思いうので、それは泉代表に委ねたいと思う。
支持率半減を受けて維新が、このまま茂木幹事長の「二股維新活用・立民ゆ党化作戦」の先兵役を続けていくのか否かが注目される。
【ジャーナリスト/横田 一】
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