2024年12月22日( 日 )

立民幹部万博会場視察、“ゆ党化路線”が鮮明に

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    1月20日14時前。大阪府副知事と大阪市副市長が案内役の万博会場視察を終えた立民の岡田克也幹事長と安住淳国対委員長が、車で現場を走り去った。現地での滞在時間は一時間足らずで、吉村洋文大阪府知事・松井一郎大阪市長の維新ツートップとも面会しなかった。

 これに対して18日の茂木幹事長視察の案内役に立ったのは、維新共同代表の吉村・大阪府知事と前代表の松井一郎・大阪市長。視察場所は二か所で、夕食も共にした(松井市長は体調不良で欠席)。翌21日の読売新聞が「維新 吉村・松井氏、面会せず 茂木氏と待遇に差」と銘打って、立民幹部の冷遇ぶりを報じたのはこのためだ。自民党との違いが可視化され、維新に冷たくあしらわれた醜態をさらすことになったのだ。

 臨時国会での成功体験を基に、通常国会でも「二股維新活用・立民ゆ党化作戦」を仕掛けた茂木幹事長の高笑いが聞こえてくるようだ。立民弱体化を狙った茂木作戦は、「まず自民と維新との関係強化を印象づけ、『維新思い』を強める立民を引き寄せるものだ(「立民ゆ党化の先兵役の維新 茂木幹事長の“二股維新活用”」1月26日、参照)。そして記事のなかで、「本命(自民)がいるのに二股が得意な女性(維新)と別れたくない男(立民)がすり寄ってくる」と恋愛ドラマ風に紹介したが、この立民両幹部の万博視察はこの一場面とぴったり重なり合うものだったのだ。

 視察後の囲みで待遇差について聞かれた岡田幹事長は「副知事、副市長が来られ、しっかりと説明されたので十分だ」と答えたが、傍目には「本命(自民)がいる女性(維新)を追いかけたが、冷たくあしらわれたモテない男」としか映らないのだ。

    政権監視の本業を疎かにする姿も露わになった。視察後の囲みで私が「軟弱地盤を問題にしている反対派、市民団体とは会わないのか」と聞くと、岡田氏は「とくに予定はない」と答えたので、「権力追及姿勢に欠けるのではないか。維新との連携強化、いわゆる“ゆ党化路線”が支持率半減(時事通信の世論調査結果)を招く一因とは思わないのか」「事業者側だけから聞くのは、野党としての役割をはたしていないのでは」と再質問を続けたがと、「万博会場として問題があるとは理解していない」という回答するだけで、隣のカジノ用地にも共通する軟弱地盤問題を追及する姿勢は皆無だった。 

 ここで司会者が会見打ち切りを告げたので、「支持率半減の理由は何だと思うのか」とも聞いたが、「それはハッキリしていないから」と岡田氏は答えるだけ。「維新との連携強化がマイナスになっているのではないか。今回の視察は、維新との連携強化の一環ではないか。維新へのゴマすりではないか」と声掛け質問を続けたが、無言のままで車に乗り込み、視察現場を後にした。

 隣り合う万博会場とカジノ(IR)の予定地は、ともに軟弱地盤(土壌)が国会でも追及されている大阪湾の人工島「夢洲」にある。「大地震で液状化して建物が使い物にならなくなる恐れがある」と専門家が指摘、住民投票を求める署名集めをした市民団体も問題視していた。れいわ新選組の大石晃子衆院議員も二回にわたって内閣委員会で取り上げ、「(政府の審査委員会に)土壌の専門家が入っていない」なとど問い質していた。

 しかし野党第一党の立民幹部は、維新がツートップの大阪府・大阪市の事業者側(副知事と副市長ら)からだけ話を聞いて問題なしと結論づけた。自民と維新が二人三脚で進める国家的事業を検証する責務を放棄、政権補完勢力として与党に迎合する「ゆ党的視察」であったのだ。

 万博視察を含めた維新との連携強化(ゆ党化路線)が立民の支持者離れを招かないのか。1月19日の本サイト記事「維新との連携で“ゆ党化”する立民泉代表、安倍派にも同調」では、泉代表に対して「統一地方選敗北なら辞任するのか」と責任論について聞いたやりとりを紹介したが、岡田氏にも幹事長会見で同主旨の質問をぶつけてみた。

 ──維新との連携強化が悪影響を統一地方選に悪影響をおよぼすのではないかという観点から聞きたいのですが、1点目が「防衛増税」がメインテーマだと仰ったネーミング自体が論点の矮小化、なぜ岸田軍拡反対、防衛費倍増反対とストレートに言わないのか。櫻井よしこさんが基調講演をした防衛費抜本拡大集会に維新が出ているが、維新に配慮して政策が矮小化した、財源論に矮小化したのではないか。政策的に歪められているのではないかというのが弊害の1点で、(立民と維新の)合同国対についても国民民主党には声をかけて、れいわ・共産・社民、前回の総選挙で一緒に戦った政党には声をかけなくて、明らかなリベラル路線からの転換、変更なので、これも支持者離れを招く恐れがあるのではないか。万博視察についても、隣のカジノIRの軟弱地盤、維新のおかしな政治の具体例があるのにそこを見ないのも維新に配慮して立民らしさを失っているのではないかと。こういういくつものことが重なって立民の支持者減につながるのではないか。統一地方選敗北につながる恐れがあると思うが・・・。

 岡田幹事長 はい。考え過ぎだと思う。まず第1点は維新、あるいはほかの野党を含めて共通する項目として「防衛増税反対」が出てきているのであって、共通するところにおいて共闘するということだ。しかし我が党として言っている43兆円の問題とか、反撃能力の問題とか、防衛3文書全体に対する議論は、しっかり国会でやっていかないといけないと思っている。その最大公約数として取り上げたものが「増税」ということだ。

 ほかのれいわとか共産とか社民には個別には話をしている。国民民主党にも「維新とこういう合意をするが、一緒にやらないか」という呼びかけをした。お互い共闘できるところは、他の野党と共闘していこうという気持ちだから、別に排除しているわけではなく、そのことによって立憲民主党の考え方が変わったとかということではない。

 万博は国が行う事業であって、やはり一度見ておきたいと思った。これから予算がどうなるのか。非常に膨れ上がってしまう話も出ている。地盤の問題もある。しっかりと現地を見て今後、議論をしたいと考えているところだ。カジノは明確に申し上げておきます。反対です。

 ──いま「最大公約数」と言ったが、そのなかに維新を入れるから増税、財源論に矮小化されて、維新を入れずに防衛費倍増自体に反対だと。敵基地攻撃自体はおかしいというところをメインの論点にしないのは、まさに維新の連携強化で(立民の)政策が歪められている、立民らしさが失われるということにならないのか。

 岡田幹事長 私たちはいま仰ったことについても国会でしっかりと議論していきたいと考えている。

 ──なぜ「増税」が前面に出て「軍拡反対」が前面に出なかったのか。

 岡田幹事長 軍拡反対という言い方は私はしていません。

 ──防衛費倍増反対をまず言わなかったのか。米国兵器爆買自体がおかしいのではないかとか。それがかえって日本国民を危険に招くのではないかという本質論をまず立民が言わなかったのは、維新(との連携強化)のせいではないかと疑わざるを得ないと思うが・・・。

 岡田幹事長 いま仰ったことが本質かどうかは見解の相違だ。

 ──(統一)地方選で支持者離れで(立民が)伸び悩んで敗北した場合、岡田幹事長をはじめ泉代表は責任を取るのか。(維新の)馬場代表は5割増の議席増ではないと辞めると言っているが、立民の場合はまあ「半分の25%ぐらい伸びないと辞める」という決意、目標設定はするのか。

 岡田幹事長 そういうことはあなたからいわれる筋合いではないと思う。

 ──(目標設定は)やらないのか。責任は取らないと。こういう立民らしさを失う政策を次々と打ち出して、それでも責任を取らないのか。

 岡田幹事長 私が最初に幹事長就任のときに言ったように、「今までのリベラルを大切にしながら、しかし過半数の人に支持される政党にならなければ政権交代はできない。政権交代を目指して、党の運営をしていく」というのが私の信念だ。


 岡田幹事長も泉代表と同様、統一地方選敗北を招いたときの責任論(目標設定)について具体的に語ることをしなかった。しかし一部の世論調査(時事通信)では、立民の支持率も半減した。維新との連携強化がマイナス要因となり、支持者離れを招いている可能性がある。このまま立民執行部が、維新共闘強化の“ゆ党化”路線に邁進するのか否かが注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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