2024年09月01日( 日 )

Z世代の就職の軸は変化 「多様性」が企業を変える理由とは(後)

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(株)JobRainbow
代表取締役CEO 星 賢人 氏

 LGBTフレンドリー(※)企業だけを掲載する求人サイト「JobRainbow」。このサイトの大きな特徴は、「LGBT当事者などに対する理解が進んだ企業」への就職を希望する人々と職場環境を整備させた企業のマッチングの機会を創出していること。(株)JobRainbowは求人サイト運営のほか、LGBTフレンドリーな労働環境づくりに取り組む企業への研修や講習も行っている。これらのサービスはなぜ生まれたのか、このプラットフォームがもたらす変化は何なのか。同社代表取締役CEO・星賢人氏に話をうかがった。

※LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)について学習・理解し、彼らが安心できる環境を整えること。

「変わった価値観の人もいる」ではなく「価値観が変わっている」

(株)JobRainbow    ──Z世代をはじめとした若い世代独特の感覚のように思えます。

 星 海外の調査で「自分自身が完全なストレート(※)ではない、またはLGBTQである」という質問を若者向けに行ったところ、イエスと答えている人は中国で23%、アメリカで36%、イギリスでは54%となっており、若い世代ほど増えています。

※身体的性と自分で認識している性が一致していて、かつ異性を愛する人々のこと。

 これまではシングルメディアの時代で、テレビ・ラジオ・新聞とメディアの種類は数えるほどしかありませんでした。さらに、数少ないメディアであるテレビを家族みんなで見るなど、ハード自体の数も少なく、同じ価値観を形成されやすい環境でした。

 しかし現在はこれらに加え、TikTokやInstagramなどのSNSやYouTubeと、メディアが多方面に分散しています。自ずと情報源が多様になり、結果として価値観も多種多様に形成されるようになりました。

 また、各種メディアで活躍する「インフルエンサー」と呼ばれる人たちは異質性をもつために求心力があり、マイノリティであることにスター性を感じるようです。私の時代はLGBT当事者という「違う人たち」はいじめられて当然という風潮がありましたが、現在はメディアにおいてさまざまなマイノリティが活躍し、「かっこいい」という尊敬の対象となっています。実際に、学校のクラスの同性カップルをクラスメイトで応援していると話す学生もいて、確実に価値観が変わっていることを実感しました。

 メディアは「身体の拡張機能」であり、テレビによって目が拡張され、ラジオによって耳が拡張されます。テクノロジーを通じて人は拡張され、体験の幅が大きく広がり、価値観が変化するのですが、幼少のころからこのようなテクノロジーの影響があった人たちとそうでなかった人たちの間では大きな差が生まれています。

 ──D&I(ダイバーシティ&インクルージョン:多様性と包括性)への取り組みに踏み出せていない経営者の最初のステップはなんだと思いますか。

 星 「自分が何をしたいかをいう」ことが必要ではないでしょうか。経営者は、会社のビジョンや今後の姿、社会にどういう影響を与えたいかということを定義する人だと考えています。経営者がビジョンを伝えないと、従業員はゴールを知らぬまま仕事をすることになります。

 たとえば、中長期的に成長できる会社にしたいと思うのであれば、先述の通り、ダイバーシティが必要で、多様なメンバーがお互いに安心感をもって働ける職場をつくらなければなりません。自分の弱みをさらけ出しても大丈夫だと思えるような安心感のある場所でなければ、イノベーションを起こすために自由な意見を出すこともできません。

 「世の中の潮流に合わせなければ」という能動的ではない理由でダイバーシティに取り組んだところで、うまくいかないケースが多いです。そのためには、まず経営者が納得感をもってD&Iに取り組むこと。そしてそれを社内外に自分の言葉で伝えられるということが重要です。

就活イベント風景
就活イベント風景

 ──読者の皆さんへメッセージをお願いします。

 星 以前、当社で就活イベントを行った際、全国各地から800人以上の方が集まってくれました。来場理由を聞いてみると、「地元企業への就職を希望したけど、面接でカミングアウトをしたらその時点で怪訝な顔をされた。結局就職することができず、上京するしかなかった」と話してくれました。イベントへ来場してくれたことは非常に嬉しかったのですが、その方々がもっていた地元へ貢献したい気持ちや愛情を成就させられないのはもったいないですし、何よりそのような熱意をもった人こそ地元で活躍していくべき存在だと思います。

(株)JobRainbow 代表取締役CEO 星 賢人 氏
(株)JobRainbow
代表取締役CEO 星 賢人 氏

    また、会社として取り組めば必ず良い結果が得られる、科学的にもD&Iに取り組むことで収益性や各従業員の1人ひとりの生産性が上がり、離職率を下げることができると証明されています。さらに、D&Iが変化させるのは会社の風土の部分であり、設備など大掛かりな投資コストはかかりません。すぐに始められる会社改革ですので、まずは取り組んでみませんか? 

(了)

【杉町 彩紗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:星 賢人
所在地:東京都渋谷区神山町5-20
設 立:2016年1月
資本金:2,600万343円
URL:https://jobrainbow.jp


<プロフィール>
星 賢人
(ほし・けんと)
1993年千葉県生まれ。立教大学を卒業し、東京大学大学院情報学環教育部を修了。2016年1月に(株)JobRainbowを設立し、同3月にサービスを提供開始。「Forbes 30 Under 30 Asia / JAPAN」にも選出された。上場企業を中心とし、500社以上のダイバーシティコンサルティング実績を有する。

(前)

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