【新春トップインタビュー】医療の現場を“経営”で支える 顧客ニーズに応え、事業を拡大

総合メディカル(株)
取締役会長 坂本賢治 氏

 医療機関を取り巻く経営環境は、物価高騰や人件費の上昇、それらと診療報酬改定とのタイムラグによって急速に厳しさを増している。持続可能な医療提供体制の構築は喫緊のテーマだ。そうした医療業界において、現場から経営を支え続けているのが総合メディカル(株)だ。同社は「そうごう薬局」を中核に、顧客のニーズに応じるかたちで病院・クリニック・薬局の関連領域へと事業を拡大。現在では総合メディカルグループ全体で調剤薬局約790店舗、従業員約2万3,000名を抱えるまでに成長している。坂本賢治取締役会長に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)

薬局業進出のきっかけは
医師からの相談

総合メディカル(株) 取締役会長 坂本賢治 氏
総合メディカル(株)
取締役会長 坂本賢治 氏

    ──事業の出発点はどこにあったのでしょうか。

 坂本賢治氏(以下、坂本) 当社は1978年に医療機器に特化したリース会社として設立されました。サラリーマン7人で興した会社です。当時のリース業界は商社系や銀行系などの大手が中心で、実績のない独立系の当社が信頼を得るまでには相当な苦労があったと聞いています。

 そうしたなかで、私たちは医療機器の専門リース会社としての強みを生かし、開業支援を通じて医師との信頼関係を築いていきました。「よい医療は、よい経営から」のコンセプトのもと「先生はよい医療に専念してください。経営面は私たちが支えます」、この一貫した姿勢が当社の原点です。医師の志に共感し、その実現を支援する。その先に医療機器の導入があり、メーカーや卸とも交渉しながらリースにつなげていく。そうして一歩ずつ成長を遂げてきました。

 ──現在、貴社は調剤薬局「そうごう薬局」事業の印象が強いですが、参入の経緯はどのようなものでしたか。

 坂本 実は、最初から戦略的に薬局事業を狙っていたわけではありません。きっかけは、開業支援をしていた先生からのご相談でした。「これからは医薬分業の時代。服薬指導は専門家に任せたいので、薬局を運営してくれないか」という声に応えた結果だったのです。

 当時は社内に薬剤師が1人もいない状態からのスタートで、人材確保を含め、ゼロから1つひとつかたちをつくっていくのは容易ではありませんでした。しかし、制度改革という時代の大きなうねりのなかで、当社は「医薬連携」の考えで、医療機関と患者さんのニーズに寄り添い続けた結果、現在では全国約790店舗にまで広がる中核事業へと成長しました。

 このように当社の事業は、創業以来、「よい医療を支え、よりよい社会づくりに貢献する」の使命を掲げ、社会的課題を解決するかたちで、事業を展開してきました。

病院内で市場を開拓

 ──“病院のなかにビジネスがある”という発想を強くお持ちだと感じます。

 坂本 病院内には、医師や看護師でなくても担える業務が数多く存在します。それらを外部が請け負う、あるいはデジタル化でカバーすることで、医療提供体制はより効率化できるはずです。そこにこそ、私たちの事業機会があると考えています。

 その象徴であり、重要な柱の1つが、テレビレンタル事業です。病室のベッドサイドに設置する、テレビ・冷蔵庫・収納を備えた「床頭台(しょうとうだい)」の提供です。現在、日本全国の病床数約153万床に対し、当社は約20万台のテレビセットを設置しており、国内トップクラスのシェアを誇ります。

 背景には、患者さんの“テレビを見たい”という相談を看護師が全部対応していたという実態がありました。看護師は看護の専門職です。テレビの細かなトラブル対応は負担となっていました。当社のセットを導入することで、そうした負担が激減し、看護業務に集中できる。この「現場からの喜びの声」が、普及の一番の原動力となりました。

 総合メディカルグループでは、院内売店・コンビニ(118店舗)や、レストラン・カフェ(59店舗)の運営も行っています。コンビニはローソンのFCオーナーとして展開しており、そこを起点に入院セットなどのサービスも広げています。パジャマ・タオル・洗面用具など、入院時に必要な商品のセットです。最近とくにニーズが高まっているのが、1日単位で貸し出す「入院セット」です。独居の患者さんも増えており、急な入院で身の回りの品を準備できず困るケースが少なくありません。そうしたニーズに応える仕組みとして、利用が広がっています。

業界再編はこれから

 ──業界ではどのような構造変化が生じていますか。

 坂本 医薬の分業率はすでに8割を超えている段階です。全国の薬局店舗数は約6万3,000店とコンビニより多く、市場規模も8兆円を超えています(※)。

 当社は近年M&Aを積極的に行っています。同業の調剤薬局は買収時に事業の実態がわかるため、PMI(買収後統合)をスムーズに進め、比較的短期間でシナジー効果を発揮できるのが大きな強みです。

 一方、ゼロからの新規出店は読みづらいところがあります。すでに地域で信頼を築いている店舗を継承し、当社のノウハウをかけ合わせるM&Aは、確実かつ迅速にネットワークを拡大できます。最近では、24年12月に広島などで約60店舗を運営する(株)ライフアート(広島県安芸郡)を子会社化しました。

※薬局店舗数は厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況(薬事関係)」によると6万3,203 軒。コンビニ店舗数は(一社)日本フランチャイズチェーン協会「JFA コンビニエンスストア統計調査月報」(25 年11 月)によると5 万6,007店。

 ──ドラッグストアとの競争はどうでしょう。

 坂本 ドラッグストアはもともと調剤に力を入れていませんでしたが、ここ数年は急速に強化しています。業界でも合従連衡が進み、たとえばウエルシアホールディングス(株)と(株)ツルハホールディングスの合併、スギホールディングス(株)によるI&H(株)(阪神調剤)の買収など、再編が実際に起きています。大手は資金力も大きく、調剤薬局との競争が今後起きると思います。

 ──病院の赤字が深刻ななか、それは重要ですね。病院の赤字の構造的な問題は何でしょうか。

 坂本 病院の収入は国が定める診療報酬で、改定は2年に1回です。しかし、インフレ局面では物価高騰による各種コストや人件費などが上昇していきますが、診療報酬の改定のタイミングとは時間差が生じます。デフレの時代はコストが上がりにくいので経営が安定しやすいのですが、今のようなインフレには弱いのです。

 医療機関は7割が赤字とされています。赤字だと設備投資もできず、効率性も落ちます。日本の医療は世界でも高水準といわれますが、そのギャップをどう埋めるかが、制度設計上も経営上も大きな課題です。とはいえ、診療報酬の原資は公費・保険料など国民が負担しているものであり、医療の持続性と負担のバランスを踏まえたうえでしっかり議論されるべきだと思います。

“対物”から“対人”へ

そうごう薬局福岡大名ガーデンシティ店(福岡市)
そうごう薬局福岡大名ガーデンシティ店
(福岡市)

    ──調剤薬局が今後はたしていく役割をどう考えますか。

 坂本 調剤薬局、薬剤師の役割も、今まさに大きな転換期を迎えています。これまでは処方箋に基づいて正しく薬を渡せば仕事は終わりでした。しかし今後は「渡した後のフォロー」の役割が、真の価値になっていくでしょう。

 “対物”から“対人”へが業界の大きな流れといわれます。薬をモノとして渡すだけでなく、その薬を飲む人を見て、継続的に関わりながら支えていく。患者さんが正しく服用できて、副作用は出ていないか、お困りごとはないか、そうした対人業務に軸足を移していくことが、求められる本質的な役割だと考えます。

 ──薬剤師の需給についてはどう見ていますか。

 坂本 この約20年間に薬学部の定員が増え、関連の大学も増えました。定員数は計1万2,000人前後となっています。薬剤師の進路は調剤薬局、ドラッグ、病院の大きく3つに分けられます。ただ現在はドラッグストアが多く採用しており、その分病院への就職が少なくなっているという問題があります。一方で、将来的には薬剤師が余る事態となる可能性もあると予想されています。

 ──業界でのDXの進捗はどうでしょうか。

 坂本 薬局は民間企業の運営が多く、経済合理性が働きやすくデジタル化が早いです。一方で病院、とくに一般診療所では進みにくく、電子カルテ普及率は診療所で23年に過半数を超えた状況となっています。また、若い医師は病院で電子カルテに慣れており、近年開業する医師はほとんど電子カルテを使っています。世代交代が進み彼らが開業するようになると自然にデジタル化が進むだろうと見ています。

 とはいえ、患者さんからは「医師が患者を見ず、電子カルテの画面ばかり向いている」との不満の声も聞かれます。デジタル化と対人コミュニケーションとのバランスは今後の課題と思われます。

「渡した後」もフォローを

そうごう薬局天神中央店(福岡市)
そうごう薬局天神中央店(福岡市)

    ──26年はどのような取り組みに力を入れていきますか。

 坂本 大きく3つあります。1つ目は、がんなど特定領域の専門の薬剤師を育成し、専門性の高い薬局機能をつくることです。実際にがん患者を専門とする薬剤師を配置している専門医療機関連携薬局は、当社には福岡県内に3店舗、全国で11店舗あります。

 2つ目は「かかりつけ薬剤師」を増やすことです。患者さんが特定の薬剤師を自身のかかりつけとして指名し、同意の基に成立する制度です。24時間、服薬に限らず健康のことを含めて同じ薬剤師に相談できることで患者さんの安心感を高められるものであり、こうしたニーズに対応していきます。

 3つ目が「在宅医療」、薬剤師の訪問サービスです。高齢化で薬局に来ることができない人が増え、外来数は減少傾向にあります。薬局の側から患者さんの家に行き薬を届けるなど患者さんの生活の実態に寄り添う仕組みを積極的に構築したいと思います。“対物”から“対人”へと、地域密着型の「みんなの健康ステーション」として、今後も患者さんのニーズに沿った薬局であり続けるために変革していきます。

 ──最後にグループの今後のスローガンをお聞かせください。

 坂本 これからの医療提供体制を支え、持続可能なものにしていくために、3つの柱があります。1つ目は病院ソリューションの拡充です。病院内には、まだ効率化の余地や新たな事業機会があると思っています。病院にとってはコアではない業務ながらも患者・病院双方に価値のあるサービス―たとえば、ベッドサイドビジネスのデジタル化、院内売店・レストラン、入院セットレンタルの拡充などを通じ、病院経営をトータルでサポートしていきます。

 2つ目は医療モールの展開です。地域にとって必要とされる医療モールを開発します。地方では1カ所で複数の診療科を受診できる利便性が求められます。一方、都市部では急性期病院の外来機能の一部を担う連携型の医療モールの構築を目指しています。普段は地域のモールで診てもらい、必要に応じて急性期病院へ紹介する導線をつくることで、患者さんの負担軽減と医療資源の最適化を図ります。

 3つ目は開業支援による第三者継承の強化です。現在、全国約10万軒の診療所のうち、約2万軒で医師が70歳を超え、後継者問題に直面しています。地域の医療機能が衰えれば、地域そのものが縮小してしまいます。地域の医療の灯を消さないため、私たちは、意欲ある若い医師へのスムーズなバトンタッチを全力で支援します。医療の継続性を守ることは極めて大きな社会的意義をもつミッションであり、今後最も注力すべき領域だと考えています。

【文・構成:茅野雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
代 表 :多田荘一郎ほか1名
東京本社:東京都千代田区大手町1-7-2
福岡本社:福岡市中央区大名2-9-23
設 立 :1978年6月
資本金 :10億円
売上高 :(25/3単体)1,103億100万円


<プロフィール>
坂本賢治
(さかもと・けんじ)
1958年10月9日生まれ。佐賀県出身。福岡大学法学部卒。83年、(株)総合メディカル・リース(現・総合メディカル(株))入社。東日本支社長、常務、専務、副社長などを経て2016年4月に代表取締役社長に就任。25年4月から取締役会長。

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