2024年11月24日( 日 )

トルコの被害を拡大した脆弱な建物 トルコ以外の被害地域は

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地震大国トルコ

トルコ 国旗 イメージ    トルコは日本と同様に複数のプレートがせめぎ合う場所に国土をもつ、世界有数の地震大国である。トルコはアナトリアプレートという小さな大陸プレート上にあるが、それを囲んでユーラシア、アラビア、アフリカの、3つの大規模な大陸プレートが衝突している。今回地震が発生したのは、トルコ南東部の東アナトリア断層。西向きに動くアナトリアプレートに対して、北西向きに力を加えながらアラビアプレートが衝突することで断層面が水平方向にずれる横ずれ断層であり、年間6~10mm程度ずつずれているという。

 1999年に1万7,000人余りが死亡し、マグニチュード(以下、M)で7.6を記録したトルコ北西部(イズミット)地震は、トルコ国内でも今回とはまったく正反対の場所にあたり、ユーラシアプレートとアナトリアプレートの境界である北アナトリア断層で発生した。まさにトルコは活発な大型活断層に囲まれた地震大国なのである。

被害を拡大した脆弱な建物

 今回、現地時間2月6日午前4時17分に発生した地震はM7.8、続いて同日午後1時24分にはM7.5を記録した。

 トルコ政府の発表によれば、今回の地震によって全土で3,450以上もの建物が崩壊したという。

 現地の画像では建物が倒壊して瓦礫の山と化した様子が見られ、層崩壊(パンケーキクラッシュ、pancake collapse)と呼ばれる現象が多くの建物で発生したと考えられる。これは建物全体のなかで、とくに剛性が弱い特定階層に地震動による衝撃が集中しその階層がまず崩壊することである。その結果として、特定層の崩壊の衝撃が建物全体の構造を連鎖的に破壊してしまい、全体が崩落する。建物が押しつぶされるように崩壊するため、人命への被害が大きいとされる。

 トルコでは多くの建物が、コンクリート製の柱と梁に、石積みのブロックで壁をつくったような建築であり、地震動によって石積みのブロックがまず崩壊して、補助をなくした柱も崩壊したとみられる。

 トルコでも建築基準法に相当する法律をたびたび改正しており、全半壊戸数13万戸以上を記録したとされるイズミット地震の後では、建物の基礎の深さや、部材の材質を規定するなど、耐震性を強く意識した法改正が行われたようだ。しかし現状としては、法改正以前の古い工法による住宅が圧倒的に多く、それが被害を拡大したと見られる。

 今後、同様の被害の発生を防ぐために、トルコでも旧建築物の早急な耐震構造化が望まれるが、経済的な課題を抱えた同国では、その対応が後回しにされるのが現実であるようだ。

 地震発生直後から同国のエルドアン大統領が、被害への迅速な対応姿勢を見せている。トルコでは6月までに実施される大統領選挙を控えている。EU中最悪インフレ率や、2021年の山火事などにより支持率が低迷している同大統領にとって、今回の地震への対応に対する評価が、来る選挙の結果を左右するものと見られているためだ。

トルコ以外の被害地域

 被害地域はトルコ南東部だけでなく、内戦が続くシリアの北西部におよぶ。シリア北西部はクルド人、シリアのアサド政権、シリアの反政府勢力、ジハーディストなどの勢力が割拠する紛争地域であり、長年にわたる内戦の結果、400万人以上が人道支援を必要とする地域である。現地の被害情報は限られており、シリア政府によればアレッポ等の都市で被害が広がっているとの情報や、反政府勢力地域で活動するホワイト・ヘルメットによれば同地域で1,200人以上の死者、2,600人以上の負傷者が出ているという。今回の地震による人道危機のさらなる深刻化が懸念される。

【寺村朋輝】

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