日中関係の打開に向け新機軸を(4)
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国際政治経済学者・参議院議員 浜田 和幸 氏
9月3日には、中国・北京で抗日戦争勝利70周年記念軍事パレードが予定されている。安倍首相が参列するかどうかは不明であるが、その前後にロシアのウラジオストックでプーチン大統領も出席してロシア極東地域の資源開発に関する大きなシンポジウムが開催される。このシンポジウムには、日本企業も多数参加することになっている。
ロシアは現在、ユーラシア経済圏の構築を推進中。一方、中国はユーラシア大陸を横断する東西交易の道を現代に蘇らせる取り組みを推進し、さらにサイバー空間や宇宙にまでそうした構想を広げようとしている。
このように、今の時代は地球規模で大きな変化が生まれようとしているのである。中国とロシアは相互協力関係を強化しているが、日中も一方的に相手国を非難し合うという「非難外交」から、そろそろ卒業してもよいのではないか。
日本の一部には自虐的史観が散見される。必要以上の自虐史観は払拭すべきときが来ている。でなければ、中国との関係になると、どうしても中国から一方的に攻められているような感覚に陥りがちになってしまう。そうではなく、もっと前向きに、バランスの取れた日中関係を積み上げるべきときなのではなかろうか。
日中両国が協力することによって、世界的規模で拡大しつつある諸問題を解決できる可能性がある。であるのに、あえてそのような可能性から目を逸らしているように思えて、残念である。とくにアメリカは、国家戦略に基づいてTPPから中国を排除してきた。環太平洋と銘打ちながら、最も大きな国である中国抜きで議論が行われている。これでは、発想自体が最初から破綻していると言わざるを得ない。繰り返すが、アメリカにとっても日本にとっても、中国は最大の貿易相手国である。さらにインドもインドネシアも重要なパートナーである。しかし、そのような国々はすべてTPPから除外されている。まさに片肺飛行のような状態で、オバマ大統領はTPPを進めようとしている。こんな半端なやり方では、中頓挫を繰り返すのも致し方ないと言えよう。
通常の自由貿易の枠組みではなく、中国の脅威を前提とした封じ込め政策へアメリカが大きく舵を切ったとすれば、そのような政策は世界の経済・安全保障を考えたときに、決してプラスにならない。ましてや日本やアジアの国々にとっても、得るものより失うものが多くなるだろう。今こそ、積極的平和主義外交という創造的な観点から、日米中の連携プレーの道を見出す努力を加速すべきである。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。関連キーワード
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