2024年12月23日( 月 )

M&A戦略を推進して事業を拡大 持続可能な社会の実現にも注力(前)

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OCHIホールディングス(株)
代表取締役社長執行役員 越智 通広 氏

 建材・住宅設備機器の販売や住宅用木材の加工・販売を手がけるOCHIホールディングス(株)。近年は積極的にM&Aを行い、2022年11月現在、全国各地に83拠点を展開している。同社の越智通広社長に今後の展望などを聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 執行役員 鹿島 譲二)

コロナ禍で戸建需要が増加 22年3月期は大幅増益

OCHIホールディングス(株) ​​​​​​​代表取締役社長執行役員 越智 通広 氏
OCHIホールディングス(株)
代表取締役社長執行役員 越智 通広 氏

 ──2021年に「ウッドショック」が発生しました。貴社の事業への影響も大きかったのでは。

 越智通広氏(以下、越智) 21年前半は木材不足、後半は合板が不足しましたし、半導体不足で設備商品が不足するなど、21年はたしかに大変な1年でした。ただ、木材価格に関してはその後、落ち着きを取り戻しつつあります。価格が急速に下がったわけではありませんが、ピークアウトした感はあります。

 ──22年3月期は増収および大幅な増益を達成されています。要因はどの辺りにあるのでしょうか。

 越智 当社のメインターゲットである持家・分譲戸建住宅の着工戸数は前期比で8.4%増加し、それが増収増益に寄与したといえるでしょう。またM&Aによって事業ポートフォリオの拡大や各事業の強化も着々と進みました。

 なお、23年3月期第2四半期も増収増益で、売上高、営業利益、当期利益は第2四半期としては過去最高を更新しました。持家・分譲戸建住宅の着工戸数は反動減もあって、前年同期比6.2%減でしたが、脱炭素関連商材の拡販、非住宅市場の開拓などに注力した結果、市場の冷え込みをカバーするだけの売上を確保することができました。

M&Aを駆使し事業拡大を図る

 ──積極的にM&Aを行っています。貴社は子会社化した会社の業績を必ず良くしているような印象がありますが、秘訣のようなものはあるのでしょうか。

 越智 子会社化する会社がグループの業容拡大、収益力向上につながるかどうかをいかに見極めていくかが重要だと考えています。市場環境を見据え、これから伸びるであろう、また伸びずとも安定した収益を叩き出せる企業を選定するようにしています。

 22年は7月に日本調査(株)を、10月には芳賀屋建設(株)を子会社化しました。日本調査は東京都板橋区に本社を置き、東北~九州エリアで構造物の診断・調査を行っています。一方、芳賀屋建設は栃木県宇都宮市に本社を置き、建築事業や土木事業を手がけています。2社を子会社化することで、エンジニアリング事業の事業拡大を図り、国土強靭化への取り組みをさらに強化できるものと考えております。

 ──M&Aの推進で、今や北は北海道から南は九州まで全国各地にネットワークを拡大しています。今後もさらにネットワークを拡大していく予定ですか。

 越智 全国各地にネットワークを構築しているのはたしかですが、エリアによって展開しているビジネスが異なります。当社が展開するいずれの事業もエリアが比較的限定されていますので、それを全国的に広げていく必要性は感じています。ただ、そうなると人員の問題も発生してきますので、まずは地域にその会社を十分根付かせたうえで、少しずつ拡大していく必要があると思っています。

 M&Aを行うにあたって、選定基準にしているのは、その会社の社風です。当社は比較的、真面目・地道といった社風ですので、そこに合うような社風の会社が大事だと思っています。

 ──子会社となった会社のモチベーションの維持・向上に関して心がけていることは何でしょう。

 越智 当社グループでは「存在意義(パーパス)」として、「安全安心でサステナブルな(持続可能な)社会を創造する」を掲げています。まずは、そのパーパスを浸透させることで価値観を共有していくことに力を入れています。

 以前は各社の社長を集めた社長会議を行い、私の方からお話をさせていただいていました。コロナ禍もあって最近は基本的にZOOMなどを使ったオンラインでのやり取りをしています。当社は北海道から九州までネットワークを構築しているので、1カ所に集まって会議をするとなると、それだけでも時間がかかりますし、交通費、宿泊費などのコストも発生します。オンラインミーティングを行うようになったことで大幅に時間・コストを削減できるようになりました。

 ──OCHIグループに入ることで、上場企業に準ずる待遇を得られるようになるでしょうし、社員さんにとっては将来的な安心感につながるでしょうね。

 越智 いきなり報酬を上げることはありませんが、採算を取れる範囲で徐々に上げていっています。M&Aをされる企業の多くは後継者不在の企業が多いので、従業員の皆さんが将来に不安を感じるのは当然かもしれません。おっしゃられるように当社グループに入ることで、ある程度、将来に対する不安感が軽減されると言ってもいいのかもしれません。

 ──生え抜きの経営幹部の育成などには取り組まれていますか。

 越智 近年は、M&Aをした会社の社長さんからの「このまま会社に残って今後も社長を務めたい」といった要望が増えており、その体制で後継者を育成していくケースが多いですね。たとえばM&Aをした会社に越智産業から社長を派遣したとしても、業態が違えばまったく勝手が違うわけです。だから、できるだけプロパーの社長を輩出するようにはしています。ただ、それが難しい場合は、同じ業界である程度の経営経験者をスカウトすることもあります。

(つづく)

【文・構成:新貝 竜也】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:越智 通広
所在地:福岡市中央区那の津3-12-20
設 立:2010年10月
資本金:4億円
売上高:(22/3連結)1,118億7,500万円
URL:https://www.ochiholdings.co.jp/


<プロフィール>
越智 通広
(おち・みちひろ)
1957年生まれ、福岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、79年4月に福岡銀行に入行。87年6月に越智産業(株)に入社し、91年6月に同社代表取締役社長に就任。2010年10月、OCHIホールディングス(株)の設立にともない、代表取締役社長に就任。15年12月に同代表取締役社長執行役員に就任。

(後)

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