2024年12月22日( 日 )

暗号資産市場の基軸通貨、ステーブルコイン(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

仮想空間での決済手段に

仮想通貨 イメージ    たとえば、ドルを銀行に預けるより、ステーブルコインを預ける方が利率は高い。DeFiサービスにステーブルコインを預けると、場合によっては、利回りが10%を超えることもある。暗号資産の価格変動性が高い時、リスクヘッジのために、それを預け、安定的な収益を発生させられるのがステーブルコインなのだ。

 そのためステーブルコインの需要は堅調で、市場は成長してきた。今後、DeFi市場の規模が拡大すればするほど、ステーブルコインの需要も増すことになるだろう。また、世界がインフレに見舞われているなか、自国通貨の価値が著しく目減りしているような国では、ステーブルコインが重宝されている。ブラジルでは通貨利用の約半分くらいをステーブルコインが占めるほど利用が増加している。さらに、今後メタバース時代が到来すると、仮想空間での決済手段としてステーブルコインが有望視されている。

金融市場にもたらすリスク

 ステーブルコインは、その発行額と同等規模のドルやほかの資産を用意していると説明した。たとえばテザーの裏付け資産は、コマーシャルペーパー(CP)、銀行預金、貴金属、国債などで構成されている。問題は裏付け資産が足りない場合で、ステーブルコインを多量に発行したものの、実際に同等規模の裏付け資産をもっていない発行者が多いことだ。

 また、裏付け資産が流動性の低い短期金融商品で構成された場合、流動性危機に陥るリスクもある。テザーが保有するCPの大半が経営不安を抱える中国の不動産開発業者のものであり、その価値はすでに大きく下落しているので、金融危機になった場合、問題にならないだろうかと疑問を呈する専門家もいる。さらに、テザーが貸し出しを増やしていることへの懸念も高まっている。破産したセルシウスネットワークがテザーからビットコインを担保に融資を受けたという事実が明るみになり、そのような懸念が急浮上したわけだ。

 ビットコインの価値が下がれば、担保の価値が目減りしてしまう。ステーブルコインに対する信頼が揺らぎ、資金の流出が多量に発生すると、ステーブルコインだけの問題ではなく、そのリスクは金融市場全般に波及する可能性がある。そうなるとユーザーはステーブルコインを換金しようとし、発行者は換金に応じるために広範囲な資産を売却することを迫られ、それが金融市場を混乱させることにつながる。

 問題は金融市場がそれぞれつながっていて、1つの市場で発生したリスクがほかの市場に転移し、システムリスクに発展する可能性があることだ。それを未然に防ぐためにも、ステーブルコインを規制する必要があると言われている。それにステーブルコインの市場規模が大きくなればなるほど、中央銀行の通貨政策の効果が落ちるという側面もある。ステーブルコインは、このまま成長するのか、それとも規制によって市場が縮小するのか、今後の展開が注目される。

(了)

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