2024年07月16日( 火 )

ChatGPT、次のAI革命の主役になるのか~中国での受け止め方

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    次のAI革命の主役になると見られている対話型AI(人工知能)のChatGPT(チャット・ジーピーティー)がこのほど、一夜にしてSNS上の話題をさらい、それに関する議論が巻き起こっている。

 リリースから1週間も経たずにデイリー・アクティブ・ユーザーが100万人を突破し、2カ月で1億人を突破した……「ChatGPT」は世界中で爆発的な人気を集め、一時は社会現象にもなった消費類AI応用製品だ。

 教育の分野においても、ChatGPTは革命をもたらすことになりそうだ。米国を見ると、ノーザン・ミシガン大学のある学生が、ChatGPTを使って哲学課の小論文を書いて提出し、クラス最高得点を獲得して教授を驚かせた。

 またある調査では、米国の大学生89%がChatGPTを使って「宿題をしている」、53%が「論文を書いている」、48%が「テストの解答をしている」と答えている。

 SNSでは、各種業界の人々がChatGPTの使用体験エピソードを紹介している。たとえば、それを使って、学生は論文を書いているほか、個人メディアのブロガーは記事の広告文を書き、プログラマーはプログラミングをしている。さらに、業界の分析報告をまとめたり、翻訳をしたり、小説を書いたりするのに使用している人もいる。ChatGPTにログインし、入力スペースに具体的な質問を入力すると、自然な言葉遣いで答えてくれる。実在する著名な文献を引用してくれることもあり、その文章は非常に知的だ。

AIの大規模商用化はそこまできている?

 本質的にいえば、ChatGPTは大規模言語モデルであり、大量のテキストデータによるトレーニングを受けて、打ち込まれたさまざまな内容に対して人と同じような反応を返すことが可能だ。薩摩耶雲科技集団の鄭磊チーフエコノミストは、「ChatGPTは大規模な言語学習モデルのトレーニングを通じて、AIの応答機能を大幅に向上させるとともに、人が出した要求に応じて、テーマに関連した内容を統合して出力することができる。強度の高いトレーニングを経たChatGPTは文章作成やコンピューター・コーディングなどができ、人によって処理されてきた知的作業を行うこともでき、文字コンテンツをイラストなどの芸術的表現形態に変換することもできる」と説明した。

 ChatGPTには実用性と機能性が備わり、これまでの歴史で最も代表的なAIの応用の1つとされ、多くの人々がAIのブルーオーシャンに対して抱く期待を高めている。

 業界では、ChatGPTの登場はAIの大規模商用化時代の訪れを意味する可能性があるとの見方が広がっている。

 北京市京師弁護士事務所の高培傑弁護士は、「ChatGPTは対企業から対消費者へのスマート運用において極めて大きな商業的価値をもち、ChatGPTの双方向プラットフォームを通じて企業と顧客が効果的なコミュニケーションプランの構築をサポートすることができる上、教育、医療、自動車、スマート施設、スマートホームなどの分野に新しい業界の発展・変革をもたらし、サービスの質を高めると同時に、企業のサービスにかかるコストを引き下げている」と述べた。

 今年2月初め、ChatGPTを手がける米国のAI研究・開発企業のOpenAIは、有料の利用プラン「ChatGPT Plus」を打ち出すことを発表した。料金は1カ月20ドル(約2,600円)として、ChatGPTが商業化した道を切り拓いた。このプランを申し込んだユーザーは無料で利用できるサービスのほか、アクセスが集中している時間帯に順番待ちをしなくていい、スピーディーな対応を受けられる、新しい機能を優先的に使えるなどプレミアムサービスを利用できる。また華西証券股份有限公司の研究報告によれば、ChatGPT以外にも、NovelAIやStable Diffusionなどの主流の応用製品が商用化をスタートさせており、コンテンツの生成回数や生成の質などの条件設定に基づいてさまざまなタイプの利用プランがあるという。

 こうした主流応用製品が徐々に商用化モデルを開拓するのにともない、AI生成コンテンツ(AIGC)業界の商用化に向けたポテンシャルが徐々に発揮されるようになった。

 専門家は、「AIGCの応用は人と機械が協同する方法を通じて価値を生み出し、またツールとしてメディア、EC、映画・テレビ、娯楽などデジタル化レベルが高く、コンテンツに対するニーズが多様な業界で幅広く応用されている。将来はインターネットの、さらにはメタバースの重要なコンテンツを生み出すインフラに成長するだろう」との見方を示した。

ChatGPTの登場であなたは失業する?

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 「ChatGPT」の登場に直面して、ビジネス界の大手企業は焦りを感じ、一般の人々も不安を抱いている。多くの人が懸念するのは、「テクノロジー業界の常識を覆す」といわれるほどの能力をもつChatGPTは、プログラマーや作家、画家など、一部の職業の人から仕事を奪うのではないかということだ。ChatGPTに「あなたは人間から一部の仕事を奪うことになると思いますか?」と質問してみたところ、ChatGPTからは、「一部の仕事、とくに繰り返しが多く正確性が求められる仕事については、AIと機械学習(マシンラーニング)技術の影響を受ける可能性があります」という答えが返ってきた。

 それでは、どんな仕事が奪われることになるのだろうか。ChatGPTは、データ入力オペレーター、繰り返しの多い事務作業、工場の生産ラインでの単純作業、電話営業担当者、簡単な顧客サービス業務などを挙げた。

 ただ、ChatGPTは、「これはすべてではありませんし、こうした仕事がただちになくなるわけでもありません。ここで注意すべきなのは、技術の発展にともなって、新たな仕事のチャンスも生まれるし、一部の仕事は変化する可能性はあるが完全になくなりはしないということです」と付け加えた。

 そして、ChatGPTは「人間はまだ新たな仕事とニーズをつくり出していますし、技術も新たな仕事のチャンスを生み出すでしょう。だから、人間とAIは共存や協力ができるようになるのであって、互いに取って代わるわけではありませんよ」と「なぐさめの言葉」をかけてくれた。

 人々は仕事が奪われるのではないかと心配する必要があるのだろうか。清華大学の人工知能国際ガバナンス研究院の副院長で人工知能ガバナンス研究センターの梁正センター長は、「これまでにほかの新技術が登場した時と同じように、ChatGPTは一部の仕事を奪い、一部の仕事を生み出すだろう。これには多くの業務プロセスにおける補助ツールになるということも含まれる」と述べた。

 また梁氏は、「私はChatGPTが今後恐るべき存在になり、社会をひっくり返すことになるとは考えていない。ChatGPTの登場はよいことであるはずだ。ChatGPTは実は人間と協力関係にあり、ロボットと同じように私たちの『手』を解放してくれる。実はとてもよいツールなのだ」との見方を示した。


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