次世代のエネルギー源として注目、小型モジュール式原子炉(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏エネルギーの考え方に変化が
ウクライナ戦争など地政学的リスクの高まりを受け、天然ガスなどが高騰、エネルギーに対する考え方に変化が見られるようになった。そこで現在、注目されているのが小型モジュール式原子炉(Small Modular Reactor)である。
世界各国がカーボンニュートラルの実現に向けて努力しており、再生エネルギーへの関心が高まっている。しかし、太陽光や風力のような再生可能エネルギーは、天候に左右され、断続的にしか稼働できないという弱点がある。そこで経済的で、地球温暖化問題にも対応できる電源として小型で、安定的で、柔軟性に優れた小型モジュール式原子炉の可能性に世界が注目している。
そのような状況下、米国の各州政府および各国政府は小型モジュール式原子炉の導入を前向きに検討しており、小型モジュール式原子炉の成長可能性は非常に大きいとされる。
なぜ小型モジュール式原子炉なのか
原子炉とは、ウランのような核分裂をする燃料を使って、発生した熱で加熱し、蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電を行う時に使われる装置で、小型モジュール式原子炉は、電気出力が300MW以下の小型の原子炉を指す。世界では70種類以上もの小型モジュール式原子炉が開発されており、そのなかでも、軽水炉型が最も実用化が近いとされる。
なぜ、小型モジュール式原子炉が話題になっているかというと、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて世界がまい進しているなか、安定電源であるうえに、稼働中に二酸化炭素(CO2)をほぼ排出しない原子力発電が、脱炭素を実現しながらエネルギー問題を解決できる現実的な方法であるからだ。そのような状況下、新たな選択肢として浮上したのが小型モジュール式原子炉だ。加えて、ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー調達リスクへの懸念から、原子力発電への期待は、ますます高まっている。
小型モジュール式原子炉は離島、海洋、深海、宇宙など、今まで電力を利用できなかったところでの活用も可能となる。小型モジュール式原子炉は、既存の大型原子炉と違い、配管や設備が小型化されただけでなく、標準化されて大量生産されるので、既存の原発リスクを軽減でき、経済性も向上すると見込まれている。
小型モジュール式原子炉は加圧器、蒸気発生機、冷却材ポンプなどを容器のなかに入れて一体化した製品である。そのため既存の原子炉のようにつなぎ目から放射性物質が漏れるリスクが大幅に軽減された。その結果、安全性は既存の原子炉に比べて1万倍ほど向上したという。
米国政府は今後新規原発の建設は厳しいだろうと判断し、原発政策の軸を小型モジュール式原子炉にシフトしている。米国政府は小型モジュール式原子炉の開発に補助金の支援や税制優遇などのサポートをすることで、開発を奨励している。支援プログラムに選定された企業はニュースケール、テラパワー、X-Energy社である。なお、イギリス王立原子力研究所は、「世界の小型モジュール式原子炉の市場は約63兆円規模に成長する」としている。
(つづく)
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