次世代のエネルギー源として注目、小型モジュール式原子炉(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏小型原子炉のメリット
小型モジュール式原子炉のメリットは小型のため、システムや部品などをモジュールとして工場で組み立てた後、設置場所に輸送することが可能な点だ。自然条件に左右される現地でゼロからつくるのではなく、ある程度のところまでを工場で生産・管理することで、高い品質管理や短い工期、コスト低減を実現できる。
二番目のメリットは、こういった小型モジュール式原子炉は、発電だけではなく、燃料電池や合成メタンの原料となる水素の生産、医療分野での利用、遠隔地でのエネルギー確保など、多目的に利用可能な点だ。
三番目は電源としての柔軟性である。小型モジュール式原子炉は、発電量も柔軟に調節できるため、負荷追従運転で再エネの変動に合わせた出力調整が可能となる。また従来の大型原子炉に比べて安全で、離島などいろいろな場所で利用できることもメリットであろう。小型モジュール式原子炉の実現は、エネルギー確保だけでなく、産業としての価値もあるので、米国、ロシア、日本、フランス、中国、韓国などがその開発に力を入れている。
そんな中、世界で唯一、小型モジュール式原子炉を実用化したのがロシアだ。2020年5月、小型モジュール式原子炉2基を搭載した海上浮体式原子力発電所(FNPP:Floating Nuclear Power Plant)が運転を開始した。
一方、米国も小型モジュール式原子炉で世界をリードすべく力を入れている。米国エネルギー省(DOE)は1月20日、米国原子力規制委員会(NRC)がニュースケール・パワーの小型モジュール式原子炉発電所の設計を標準設計の1つに認定したと発表、29年にも1号機が運転開始すると言われている。
その他、ビル・ゲイツが資金を出して設立されたテラパワー社も注目されている。中国もいち早くこの分野に目をつけ、21年12月、山東省に建設された高温ガス炉の実証炉「HTR-PM」が送電を開始するなど、小型モジュール式原子炉をめぐる動きは活発化している。
韓国も小型モジュール式原子炉に期待を寄せている。韓国は12年に小型モジュール式原子炉「スマート(SMART)」の標準設計認定を世界で初めて受けている。標準設計認定にパスするためには、原子炉で発生しうる数千件のトラブルをシミュレーションし、その安全性を立証しないといけない。標準設計認定を取得したということは、世界基準に即した安全性を確保したことを意味する。
どのような課題とリスクがあるのか
小型モジュール式原子炉の課題として「核のゴミ」の問題がある。原子炉をいくら小型化しても、核燃料使用後の高レベル放射性廃棄物が発生するからだ。これについては、解決のめどが立っていない。
また、経済性に疑問を呈する声も多い。小型モジュール式原子炉の建設コストは既存の原発の5分の1で約1,000億円。しかし、電力の出力量は10分の1になるので、生産性は既存の原発の半分以下だという。昨今、原材料の高騰など、経済性の面で不透明な要素が増えた。それに、規格が標準化されておらず、大量生産になる可能性が低く、小型モジュール化したメリットをまったくだせていないのが現状である。さらに小型モジュール式原子炉は同じ原子炉とはいえ、稼働実績に乏しく、本当に安全かどうかの保証がない。今後の推移を慎重に見守っていく必要があるだろう。
(了)
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