韓国経済ウォッチ~中国市場の激震(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
最近、中国は為替の切り下げだけでなく、株価の大幅暴落など中国経済の減速が続いていて、その行方に世界各国は神経を尖らせている。一部では、7%の経済成長も実は違うのではないかという噂もあり、最近、中国株価の暴落は中国政府に対する不信感の表れであるという分析もある。内部に何か問題があるのに、中国政府はそれを隠しているのではないかという猜疑心も働いている。
今回の人民元の切り下げは、米国の金利引き上げに対応するための措置であるという分析もある。中国は現在、米ドルの価値に人民元の価値を連動させた固定為替制度を採っている。このような状況下で、アメリカが金利を引き上げると、全世界にばら撒かれていたドルは米国に還流し、ドルの価値がさらに上昇する可能性が高い。このようなドルが高くなる状況を中国政府が放置しておくと、中国人民元もドル以外の通貨に対して、ドルとともに価値が上がることになる。そうなると、結果的に中国企業の価格競争力が阻害され、輸出が減ることになる。このような事態を事前に防ぐために、人民元を強制的に切り下げたという専門家の分析である。
一部の専門家は、人民元はこれからもまた切り下げを行う可能性があると予測している。米国は昨年から金利上げをほのめかし、ドルの価値はすでに上昇トレンドであった。このようなドルの上昇トレンドに対応すると同時に、今後の金利上げに対する先手として今回の人民元の切り下げがあったという分析である。
中国の人民元切り下げにより、韓国の対中国の輸出ではいろいろな分野で影響が出始めている。万が一人民元の切り下げが長引く場合、韓国経済には大きな痛手になるので、むしろそれを一番警戒している。韓国の電子関連会社は為替の変動に備えて、シャオミやファーウェイのような中国スマホ会社の動きに鋭意注視している。なぜかというと、為替の切り下げによる価格競争力を武器に、中国にとどまらず、韓国市場を攻略してくる可能性が十分あるからである。とくにサムスン電子は、中国と価格競争が予想される製品の価格引き下げをはじめ、価格競争力強化のための対策に腐心している。
去年、突然の原油価格の下落で大幅の赤字を記録した製油・石油化学業界も、またもや悪夢が再現するのではないかと不安に駆られている。中国人民元の切り下げは、世界最大原油輸入国である中国が深刻な景気低迷を経験しているという証左なので、中国の景気低迷は原油需要の減少をもたらし、それは更なる原油価格の下落につながる可能性があるので、製油業界では大量在庫による大きな損失を心配している。
造船業界の場合、円安の影響で受注案件を日本にとられた苦い経験がある。中国は技術力において韓国との差はまだあるので、日本とは少し状況は違うが、人民元の切り下げで似たような状況にならないように対策を講じている.
しかし、今回の人民元切り下げの影響について、異なった意見もある。両国の技術格差が縮まっているなかで、人民元が切り下がることは、韓国の輸出に相当な脅威になるという側面もあるが、韓国が中国に輸出しているのは中間財が多いため、中国の輸出増大による景気好調は、韓国輸出にプラスになり得るという分析である。
為替だけならまだいいが、中国経済は株価の大幅下落など激震が続いていて、世界は中国に振り回されている。中国経済の崩壊が世界経済にもたらす波及効果を考えると、今の金融市場で起こっている恐怖感には、共感するものがある。とくに新興国では、中国で起こっているような資金の流出が起こって、自国経済が深刻な状況に陥ることを最も警戒している。
(了)
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