東京海上日動「敗訴」の裁判にみる地震保険損害判定の「怪」(前)
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地震などによる建物や家財の損害を補償する「地震保険」。万が一の備えとして多くの人たちが加入し、東日本大震災(2011年3月)や熊本地震(16年4月)などの地震災害の発生にあたって、被害を受けた人たちの生活再建の手助けとなってきた。しかし、損害の程度を判断するのは保険会社の依頼によって動く鑑定人たち。なかには必ずしも損害の状況を適正に判断、認定したケースばかりではない。そのことを示すのが、23年1月26日、東京地方裁判所によって下され、保険会社(被告)の控訴断念により2月6日に原告勝訴が確定した裁判。建物調査などを手がけ、地震保険鑑定に精通する一級建築士であり、原告側の支援にあたった都甲栄充氏に、地震保険の問題点について話をきいた。
保険金支払いまでの流れとは
裁判は、福島県沖地震(21年2月13日、M7.3、最大震度6強)により所有する住宅(仙台市、ツーバイフォー工法(木造枠組工法))に被害が生じたT氏が、地震保険契約を締結していた東京海上日動火災保険(株)(以下、東京海上)を相手に争っていたものである。
東京地方裁判所は、「1,000万円及びこれに対する令和3(21)年6月29日から支払い済みまで年3%の割合による金員を支払え」という原告の訴えを認めた。
地震保険における保険金支払いまでの流れは以下のようなイメージだ。
地震発生後に鑑定人が現地を訪れ、建物や家財の損害状況を確認。「一部損」「小半損」「大半損」「全損」のいずれかの状態にあると評価・認定するという過程を経たうえで、相応の金額が被災者(契約者)に支払われる。
このケースでは、21年4月に行われた、東京海上から派遣された鑑定人による立会調査により「一部損」と認定され、50万円が支払われることとなった。T氏はその決定について不服であると東京海上側に申し出したことから、東京海上が依頼した調査会社によって同年7月31日に改めて立会調査が実施された。
その結果、被害程度が「一部損」から「小半損」に改められ、東京海上は保険金を300万円とするとT氏に告げた。同日、T氏は事前に依頼した調査会社による「損害認定基準に基づく調査結果報告書」を提示。そのうえで保険契約所定の計算基準に従い、建物の損害程度を「大半損」と認定すべきと主張していた。
一方、T氏は都甲氏の(株)AMT一級建築士事務所に再度、鑑定を依頼。同事務所は同年12月に「地震保険の損害認定に関する意見書」を作成し、建物の損害程度を「全損」と認定すべきであるとの意見を表明し、結果、裁判に至ったというものである(代理人は東京総合法律事務所の土屋賢司弁護士)。
(つづく)
【特別取材班】
<プロフィール>
都甲 栄充(とこう・ひでみつ)
1949年8月北九州市生まれ。明治大学工学部建築学科卒業。大成建設(株)、住友不動産(株)を経て、2009年(株)AMT一級建築士事務所を設立。建築コンサルタント、建築プロジェクトマネジメント、見積査定、顧問建築士、マンション工事監理などの業務を行っている。関連キーワード
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