2024年12月23日( 月 )

ツアーの夜行臨時列車を季節列車に~JR九州への提案(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

運輸評論家 堀内 重人

 近年、夜行列車が運転されるイベントが各地で行われるようになった。これを受けて、JR九州は2月25日(土)から翌26日(日)、夜行普通列車のリバイバル版として0泊2日の車中泊ツアー「郷愁の客車夜行『1121列車』の旅」を開催した。販売開始後10分で完売になるほどの人気を博し、第2弾として4月上旬に熊本から門司港へ向かう夜行列車のツアーを実施することも決まった。企画型の夜行列車のツアーは大井川鐵道、関東鉄道、いすみ鉄道なども実施していることから、潜在的な需要があると思われる。博多から日豊本線経由の鹿児島中央間での、夜行の季節列車の運行を提案したい。

かつての「1121列車」とは

 かつて九州には、急行「かいもん」「日南」とは別に、普通の夜行列車も門司港~長崎・佐世保間や門司港~西鹿児島(現・鹿児島中央)間で、日豊本線を経由して運転されていた。門司港~西鹿児島は距離的に400kmを超えるが、門司港~長崎間や佐世保間は220km程度と短いにも関わらず、これらの列車には三段式のB寝台車も連結されていた。

 それ以外の普通の夜行列車として、門司港~都城間で肥薩線・吉都線経由の「1121列車」と、上り列車は門司止まりとなる「1122列車」が運転されていた。こちらの普通の夜行列車は、座席車と荷物車のみで編成される比較的地味な普通の客車列車であった。

 現在の九州では、高速道路が張りめぐらされていることや、昼間の特急列車や高速バスなども発達したため、そのような短距離の夜行列車などを運転しても需要が見込めない。だが、昭和50年代までは、これらの普通の夜行列車は朝刊と郵便物を輸送するために運転されていた。各駅へ停車するたびに、刷り上がった朝刊を荷物車から降ろしていたものだ。

 門司港~長崎間の普通の夜行列車は、1985年のダイヤ改正まで運転されただけでなく、B寝台車も連結されて「ながさき」という列車名も冠されていた。「1121列車」や「1122列車」は、1972年3月のダイヤ改正時、ひっそりと運行を終了している。こんにちでは朝刊や郵便物の輸送はトラックに置き換わっており、鉄道で朝刊や郵便物の輸送が復活することは考えられない。

なぜJR九州は夜行普通列車のツアーを実施したのか

 今回のツアーは、かつて運転されていた夜行普通列車「1121列車」をイメージしており、門司港〜八代間で運行された。肥薩線は八代~吉松間が2020年の集中豪雨で被災し、復旧のメドすら立たない。また、八代から先は「肥薩おれんじ鉄道」という第三セクター鉄道となるため、鹿児島中央まで直通させるとなれば事業者間の調整が必要となり、八代止まりにせざるを得ない面もある。

 ダイヤは次の通りである。午後23時30分頃に門司港発、鳥栖に翌午前1時29分頃に到着。そこで40分程度停車した後、午前2時10分頃に鳥栖を発車、大牟田に午前2時48分頃に到着する。大牟田で1時間半停車して午前4時20分頃に発車し、熊本に午前5時03分頃に到着。約40分停車して午前5時40分頃に発車し、終点の八代に午前6時20分頃に到着した後、ツアー解散となる。

 途中の停車駅では、長時間の停車があるため、ホームでの列車の撮影が可能であるだけでなく、JR九州オリジナルグッズとして、当日の運転士用時刻表レプリカや車掌用時刻表レプリカなどの販売も実施された。

 ツアーとはいえ、臨時の夜行列車を運転するとなれば車両が必要となる。門司港~八代間は全線が複線で電化されているため、電車を用いて運転してもよかったが、「郷愁」感を醸し出すため、「SLひとよし」用の50系客車を使用することになった。

画像2  今回使用された客車は、以前は「SLひとよし」で使用
画像2
今回使用された客車は、以前は「SLひとよし」で使用

 この50系客車は、JR九州の発足後、「SLあそぼーい」を熊本~宮地間で運転するにあたり、車内を西部開拓時代のアメリカ風に改造して誕生したもの。その後、肥薩線で「SLひとよし」(画像1)が運転されることになり、客車は再度、リニューアル改造を受けた。

 改造されたとはいえ、車内は4人が向かい合わせのボックスシートを中心に構成されているため、昨今の高速バスの座席と比較すれば見劣りがしてしまう。

 そこで、旅行代金を「1ボックスシートあたり」に設定して販売した。定員4名のボックスシート(画像2)が3万1,800円、進行方向の2人用の座席が1万6,000円、逆方向の2人座席が1万3,000円である。4名定員の1ボックスを4名で利用しても、1人で利用してもいい。

 4人用の1ボックスを1人で占領すれば、足を伸ばして横になれるため、快適に車内で過ごすことができる。2人用であっても、1人で利用すれば、足を曲げるかたちで寝転ぶことが可能である。

 最少催行人数は92人であり、申し込みを主にインターネット予約を中心に受け付けることで、コスト削減を図った。またJR九州では、50系客車を用いた夜行列車は今回が最初であるという。

客車の車内は、4人掛けのボックスシートを中心に構成
画像2
客車の車内は、4人掛けのボックスシートを中心に構成

(つづく)

▼関連記事
国鉄民営化から大きく変化した日本 オールジャパンで鉄道を考える(前)
国鉄民営化から大きく変化した日本 オールジャパンで鉄道を考える(後)

(後)

関連キーワード

関連記事