2024年12月22日( 日 )

シルバーゲート、SVBの破綻で激震が走る暗号資産業界(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

悪材料が重なった暗号資産市場

暗号資産 イメージ    米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻で、暗号資産市場に動揺が広がっている。暗号資産の代表格であるビットコインの価格は、「心理的な抵抗線」である2万ドルをあっさり割り込んだ。

 SVBの破綻は、安定的であるはずのステーブルコインにも影響をおよぼしている。ステーブルコイン「USDC」は、時価総額でテザー(USDT)に次ぐ第2位のステーブルコインであるが、準備金の一部である33億ドルがSVBに預けられているため、その引き出しへの懸念や安定性への不安が広がり、USDCの価格は1ドルを下回るようになった。

 ステーブルコインは、価格が常に1ドルを保つように設計されているが、今回はそれが破られたかたちだ。コインマーケットキャップによると、準備金不安からUSDCに売りが殺到し、一時は0.88ドルにまで値を下げた。その結果、USDCの時価総額は、12時間の間に433億5,000万ドルから364億8,000億ドルと約16%急減した。

 SVBが取り付け騒ぎに見舞われた後、暗号資産市場には連鎖的に動揺が走った。ビットコインのマイニング企業の採算も悪化しており、マイニング事業から撤退する企業も多く、一部では「ビットコインは消滅する」という、過激な声も聞こえてくるようになった。

何が起こっているのか

 昨年11月に大手暗号資産交換所「FTX」が経営破綻し、業界に衝撃が走った。しかし、その後の市場は、表面的には静かだった。ところが先日、シルバーゲート銀行が自主的に清算する計画を発表した。シルバーゲート銀行はFTX破綻のあおりを受けるかたちで、2022年の最後の数カ月だけで、80億ドル以上の資金流出に見舞われるなど、今後が懸念されていた。シルバーゲート銀行は、普通の銀行と違い、主要顧客は暗号資産企業が多く、暗号資産業界の浮上とともに成長してきた銀行である。

 シルバーゲート銀行が初めて暗号資産関連企業と取引したのは14年。その当時は暗号資産企業が銀行口座を開くのは不可能だった。シルバーゲート銀行は暗号資産企業にとって、どんな取引先よりもありがたい存在で、暗号資産交換所同士の決済などに貢献した。

 シルバーゲート銀行は、米国最大の交換所であるコインベースやFTXなどを顧客にし、19年11月から21年11月まで、同社の株価は1,500%以上上昇した。預金の90%は暗号資産企業から出るほど、同社は暗号資産業界と深く結びついていた。ところが、成長を続けていた暗号資産業界に冬が到来したうえに、昨年のFTXの破産は、同社に深刻なダメージを与えた。

 資産の目減りなど、同社の経営が厳しくなると、暗号資産取引大手コインベース(Coinbase)をはじめとする各社はシルバーゲート銀行から離れていった。そのため同社は踏ん張ることができず、今回自主清算を決めたのである。

 暗号資産専門銀行であるシルバーゲート銀行に次いで、SVBも破綻した。今回の破綻は規模が大きいだけに、暗号資産業界だけでなく、金融業界にもショックが走った。

(つづく)

(後)

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