2024年12月22日( 日 )

九州経済は好調~日銀福岡支店長講演会

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講演する濱田秀夫・日本銀行福岡支店長
講演する濱田秀夫・日本銀行福岡支店長

    17日、福岡商工会議所にて、「金融・経済情勢と金融政策について~九州・沖縄経済の一層の飛躍に向けて~」と題し日本銀行福岡支店長の濱田秀夫氏が講演を行った。

 講演では、現在の世界経済、日本経済、九州経済の状況と今後の見通しから、九州で大きな経済上の動きとなっている半導体工場の建設ラッシュ、日銀のインフレ政策、日銀が試みている中央銀行デジタル通貨まで、幅広い話題が論じられた。

 以下に、主に九州経済にかかわる部分を抜粋し、その概要を記す。

九州経済の状況と見通し

 日本経済全体が緩やかな持ち直し傾向にあるが、九州はそれ以上に「持ち直している」状況にある。ただし、需要項目の中で「公共投資」のみは弱めの動きとなっている。九州の企業の業況感としては、20年以降マイナスであったものが、22年でプラスに転じ、現在はさらに上向いている。

 鉱工業生産指数は、電子部品・デバイスのけん引によって、九州は全国平均に比べ高い数値を示しているものの、現在は下降傾向にある。設備投資も、半導体関連の大型投資によってけん引されている。九州の製造業は非常に大きな割合で半導体関連によって支えられている。

 TSMCは台湾の企業であるが、台湾と九州は地理的に近いだけでなく、半導体生産に必要な降水量や高度人材の規模など共通点も多い。半導体生産額としては、九州の1.5兆円に対し、台湾は17兆円もある。TSMCを皮切りに、九州に半導体生産拠点を受け入れることによって、九州経済の大きな飛躍につなげることが大いに期待される。

インバウンド、観光業の回復でも九州・沖縄が先行

 宿泊施設の稼働指数は、全国平均を大きく上回る形で九州・沖縄が最も回復傾向にある。特に、西九州新幹線が開通した影響で、佐賀県と長崎県の回復が著しい。インバウンドの回復で圧倒的多数を占めるのは韓国人である。外国人観光客は日本食を大きな目的の一つにしている。九州は諸外国への果物等の輸出においても強みを発揮しており、第一次産業の充実はインバウンドにおいても大きな強みとなる。九州は日本でも有数の温泉地帯である。それは外国人観光客を誘引する大きな要因となるべきであるが、全国平均と比べて温泉のアピール力が弱い。この点を強化すれば、さらにインバウンド需要を九州に引き付けることができると思われる。

ツール・ド・九州への期待

 今年、10月6日~9日までの4日間、サイクルロードレースの「ツール・ド・九州」が開催される。サイクルロードレースは、欧州で特に人気が高く、広い地域をレース会場とすることから、多くの観客を動員するイベントである。たとえば最高峰のツール・ド・フランスの観客数は、オリンピック(700万人)やサッカーワールドカップ(300万人)を超える1,500万人といわれる。また、地域の景観を生かした競技になることから、広い地域への観光周遊に相乗効果を生むと考えられ、日本でもイベントとして定着することは観光業として大いにメリットがある。

【寺村朋輝】

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