2024年12月22日( 日 )

【BIS論壇 No.412】グローバルサウスとアフリカ

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は3月31日の記事を紹介する。

アフリカ イメージ    バイデン政権が主導する「民主主義サミット」が29日に始まった。約120カ国・地域の指導者を招き、オンラインで2日間にわたり開かれる。ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、民主主義陣営の結束を促し、「専制主義」の中国やロシアに対抗することを狙いにしているという。2021年12月の開催以来、2回目だ。 米中対立の激化を背景に、バイデン政権は世界各地に於ける中国の影響力拡大を懸念しているとの見方もある(『朝日新聞』3月30日付)。米国は民主主義復活に向けた大統領イニシアチブとして6億9,000万ドル(約900億円)の支出を発表した。

 台湾は前回のサミットに続き招待され、オードリー・タンデジタル発展部長(大臣)がビデオで参加。イスラエルやインドなども招待されたが、トルコやハンガリーは招待されていない。今回初めてボスニア・へルチェゴビナ、リヒテンシュタイン、コートジボアール、ガンビア、モーリタニア、タンザニア、ホンジュラスの8カ国が新たに招待された。グローバルサウス(南半球の発展途上国)への関心がとみに高まりつつある現状下で、米国と中国のグローバルサウスをめぐる対抗意識がとみに高まりつつある。

 EU脱退後、アジア回帰を目指しつつあった英国のTPP(環太平洋パートナーシップ協定の)加入が31日のTPP閣僚会議で認められる見込みだ。TPP11が発足後、英国、中國、台湾、中米、南米のエクアドル、コスタリカ、ウルグアイなども加入を申請していたが、トップを切って英国の加入が認められた。英国の加入でアジア、米州が主体であったTPPは欧州との経済関係がさらに緊密になるものと思われる。英国の加入でTPPの世界GDPに占めるシェアは12%から15%に拡大。英国のアジアとの経済、貿易関係がさらに強化されるものと思われる。

 一方、グローバルサウスとして躍進が期待されるアフリカは、21世紀前半の中国の世紀後半のインドの世紀に続き、22世紀に躍進が期待されている。 30日にZOOMで開催されたアジア経済研究所、JETROのアフリカ専門家セミナーによれば、躍進しつつあるアフリカは今世紀末には世界人口の約半分50億人となり、アフリカの世紀が訪れる。日本としてもアフリカに注力すべきだと力説していた。 アフリカでは耕地面積も拡大しつつあり、それとともに人口も増大。南アフリカ、ナイジエリアなどの企業が国境を越えて活躍しており、海外売り上げ比率が高まりつつある。

 講師らは、人口減少社会を迎える日本は、米中デカップリングの現状下、人口、鉱物、エネルギー資源豊富な22世紀の大国に発展するアフリカとの経済関係強化にさらに注力すべきだと力説した。少子高齢化で人口が減少する日本は今世紀末には人口5,000万人と中規模国家となる。人口豊富なアフリカからの移民受け入れ、人材活用が肝心だとのアフリカ専門家の指摘は傾聴に値する卓見で、得るところ大であった。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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