競争激化のクラウドサービス市場(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏クラウドサービスとは
クラウド(cloud)という用語は、最初あまり馴染みがなかったが、現在は当たり前のように使われるようになった。
コロナ禍でテレワークの増加、それに人工知能や自動運転など、ビッグデータが牽引するデジタル化が加速され、そのベースになっているクラウド市場に関心が高まっている。当然、そのサービスを提供する企業間の競争は激しくなっているし、市場も拡大している。理解を助けるため、クラウドの具体的な例を挙げよう。
ある証券会社が不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘したとしよう。その事業の収益性や将来性が高ければ高いほど、申し込みは殺到することになるだろう。とくに締切日には申し込みはピークに達する。申し込みが殺到しても、システムがダウンしないように、以前はピークに備えて証券会社はシステムの容量を用意していた。しかし、公募期間が過ぎれば、ピークに向けて用意したシステム容量は使われなくなり、無駄が多かった。そのような反省から、必要なときに必要な分だけ使い、それに対して料金を支払う、クラウドというサービスが求められた。
クラウドサービスとは、サーバー・ストレージ・ソフトウェアなど、ハードウエアやインフラ機能をそのサービスを提供する企業が保有、運営し、インターネット経由で提供してくれるサービスのことをいう。クラウドサービスの提供者は、高性能のコンピューターにソフトウェアやコンテンツももっていて、ユーザはインターネット経由でアクセスするだけで利用ができる。私たちが普段利用しているドロップボックス(Dropbox)のようなファイル保存システムは、クラウドサービスの一種である。従来は社内にシステムやデータを保管することが一般的だったが、クラウドサービスの利便性に対する評価が見直され、クラウド導入に取り組む企業が増えてきている。
最初のクラウドサービスは、インターネットショッピングで有名なアマゾンでスタートしたサービスで、2006年に世界で初めて誕生した。アマゾンはクリスマス商戦に備えて、システムの十分な容量を準備した。しかし、クリスマス商戦が過ぎれば容量のかなりの部分は使われなくなるため、それを他の企業に利用させようというのがきっかけとなった。それに、アマゾンのエンジニアは開発業務よりもサーバーの購買、ソフトウェアのインストール、インフラの整備などに忙殺されることになっていたので、その経験を有効に活かすともに、社内の生産性向上のためにAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が登場した。現在もアマゾンはクラウドサービスのトップ企業で、その後をGoogleやマイクロソフトが猛追している。
世界的にはアマゾン、Google、マイクロソフトの3社がこの分野で競合している。マイクロソフトは、Windowsの凋落とともに企業業績がかなり悪化していたが、クラウドサービスのおかげで業績が持ち直した経緯があり、同社のクラウドサービスにかける期待は大きい。3社は世界中の多くの地域にデータセンターを置くなど、莫大な投資を続けている。なぜかというと、人工知能や自動走行などを実現するためには、多くのデータを捌く能力がますます求められるようになるからだ。
ガートナーによると、世界クラウド市場は2025年まで毎年17.1%成長する市場のようだ。クラウドのサービスはプロ集団によって運営されているため、セキュリティ対策がしっかりしており、データの運用やセキュリティもレベルアップする。それに必要なデータを探す際も、検索により瞬時に見つけ出すことが可能だし、更新や修正も簡単に行える。
(つづく)
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