【陰謀論の読み方】竹原信一の思想
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「陰謀論(conspiracy theory)」という言葉は、おおよそいい意味では使われない。まず、自説を「陰謀論」であると表明する人はいないし、「陰謀論です」と断って紹介する作法も、今のところないこととなっている。要するに「陰謀論」という言葉は、どう見ても否定的な意味しか持たない言葉として使われている現状なわけであるが、しかしそのように1つの言葉を1つの意味しか持たないものと見なす語法に縛られているとすれば、それは言葉がつかさどる豊かな意味を見落とした言葉遣いではないだろうか。
竹原氏のパンフレットのなかで有名なフルベッキ写真が用いられている。私もこの写真は大好きなのだが、フルベッキ写真に付された維新の志士たちの名前のひとつひとつの真実性はさておいても、少なくとも私がそこに現れた真実性として心を踊らされることは、ひとつひとつの人物に断定的な名前を付して、それをまことしやかに伝えようとするエネルギーの横溢を感じるためだ。
人は直接的な論述によってのみ何かを伝えることができるのではなく、時には比喩を用い、隠喩を用い、寓話を用いて間接的に何かを伝えようとする。世に陰謀論と名指しされる思想についても、その虚実入り乱れた思想によってのみしか伝えることができないものがあるからこそ、人はそれを用いようとするのであって、陰謀論という言葉を否定的な意味づけ一色にして切り捨てるのは、遊び心に乏しいと思う。
正しい知識として世に流布され、あらがえない正論として世を縛る思想を相対化する1つの「遊戯」として、竹原氏の思想に触れてみるとよい。客観性に縛られた現代社会においてこそ、陰謀論の世界は思想的な自由を感じる遊戯として魅惑的なのである。もちろん、それは劇薬であって、「用量用法を守って正しくお使いください」という注意書き付きのものではあるが。
【寺村朋輝】
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