イーサリアム 大型アップデートとその影響は(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏金融市場にも大きな変化の波が
シリコンバレー銀行やクレディスイスなどの大手金融機関が破産したり、破産の危機に追い込まれるような事態が発生し、人々は既存の金融システムに対して不安を募らせている。
一方で、その反動ともいうべきか、仮想通貨の需要は増加しつつある。とくに、東南アジアやアフリカなど銀行に口座を保有していない人がかなりの割合を占めている地域において、仮想通貨は急速に普及している。インフレで自国通貨の価値がどんどん目減りしていくなか、仮想通貨は、その対策の一環として導入が進んでいる。
さらに、デジタル化の波が押し寄せている昨今のような状況では、仮想通貨はキャシュよりもハンドリングコストが少なく、かつ海外送金の際も迅速であるため、大いに歓迎されている。もちろん仮想通貨の技術はまだ発展途上にあり、改善の余地がないわけではない。しかし、銀行の破産などで金融システムの崩壊が懸念されているいま、第三者の介入なしに自分の財産を自分で管理できる分散型金融などに注目が集まっている。
イーサリアムのアップグレードとは
「イーサリアム」とは、ビットコインの次に開発された仮想通貨で、スマートコントラクト(自動契約技術)の機能が追加された分散型のアプリケーション開発プラットフォームである。
イーサリアムを活用すると、新しい仮想通貨をつくることも、今まで管理・開発が難しかったアプリなどを開発することもできる。このイーサリアムというネットワークで使用される通貨を「Ether(イーサ)」といい、手数料を「Gas(ガス)」という。
日本では、プラットフォーム「イーサリアム」と仮想通貨「イーサ」のどちらも「イーサリアム」と表現されることが多い。時価総額はビットコインに次ぐ第2位だが、規模はビットコインの5分の1ほどであるから、場合によってはビットコインをしのぐような仮想通貨へと成長を遂げるかもしれない。
非常に人気の高いイーサリアムだが、イーサリアム上で開発されたコインが多いうえ、ユーザーが爆発的に増えたことにより、弊害も出てきている。「スケーラビリティ問題」と呼ばれるもので、取引の承認時間が長くなる、手数料(ガス代)が高騰するなどの問題が報告されてきた。こうした問題を解決するため、イーサリアムでは2023年4月12日、「シャペラ」アップグレードが実施された。
「シャペラ」とは「シャンハイ」と「カペラ」の合成語。実行レイヤーである「シャンハイ」アップグレードと、合意レイヤーである「カペラ」アップグレードとを同時に進めたという意味で、「シャペラ」アップグレードというわけだ。これにより、ステーキングされているイーサリアムのロックが解除され、出金が可能になった。
「シャンハイ」アップグレードを通じて、レイヤー2チェーンの手数料の引き下げなどイーサリアムネットワークの技術的な改善が行われたが、なかでも重要なのは、ステーキングされているイーサリアムの引き出しができるようになった点である。今回のアップグレードによって2年間にわたるアップグレードは完了し、イーサリアムはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へのシフトも完了している。
(つづく)
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