2024年12月23日( 月 )

社会問題となった韓国のチョンセ詐欺(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

ウォン イメージ    ギャップ投資とは、住宅の売買価格とチョンセ価格の差額(ギャップ)だけで中古物件を購入する投機の一種である。たとえば、10億ウォンの中古マンションに借主が8億ウォンのチョンセで入居している場合、「ギャップ投資」でこのマンションを購入する人は2億ウォンの差額(ギャップ)だけ支払えば、マンションを手に入れることができる。

 仮に2億ウォンを用意することが難しい場合は、チョンセの価格を8億ウォンから9億ウォンなどに引き上げれば、1割だけ用意すれば、物件の購入ができる。それで、不動産価格が高騰を続けていた文在寅政権時代に、「ギャップ投資」という投機をしている人たちも結構いた。

 売買価格に近いチョンセ価格を設定すれば、家主は自己資金ほぼゼロで住宅を購入できるようになる。このやり方で住宅購入を繰り返していけば、濡れ手に粟で儲かるという方法があったわけだ。ところが、マンションの価格が下落すると、資産価値が低下するため、売却する際に、その分の損失が発生する。

 また、マンション価格の下落とともに、チョンセの相場も下落し、貸主からチョンセ保証金を返してもらえない借主が続出した。チョンセの相場が下がると、貸主は契約満了時に不足した分のお金を新しく用意する必要がある。このように不動産価格が下落する時期には、預けた保証金の金額が不動産の相場より高くなるような現象が起こる。

トラブル続出で大きな社会問題に

 当局の調べによると、全国にチョンセ詐欺組織と共謀して詐欺を働いた貸主は170人以上で、彼らが保有しているビィラは何と2万6千戸以上となるという。今年の年末に契約期間が終了する案件が多く、被害規模は2兆ウォン規模になることが予想されている。そのなかには、ヴィラとオフィステルを1,139戸保有していて、保証金を返還していないなか、死亡したウヴィラ王も含まれている。

 また、ある事例では、夫婦が契約を終えて入居した日に、ヴィラのオーナーが変わっていたという。すなわち、前のオーナーはその夫婦が住むヴィラを売却したのだ。ところが、夫婦は契約満期2カ月前に新しいオーナーへ契約満了希望の連絡をしたところ、新しいオーナーはお金(返金する保証金)はない」との1点張り。その後は、電話にも出なくなったという。

 あとで分かったが、新しいオーナーは夫婦が住むヴィラのほかに、1139もの物件を所有しており、総合不動産所得税など、63億ウォンが未納状態になっていたという。その結果、この夫婦は保証金2億ウォンを返してもらっていない。韓国政府では、今後このようなトラブルを未然に防止するため法改正に動いている。

 来年から借主は借主の同意なしに貸主が税金を滞納していないかなどを閲覧することができる。さらに、保証金を返還されていないなか、家が競売にかけられた場合、滞納税金よりも先に保証金を返還してもらうことができるようになった。韓国の賃貸制度を支えてきた「チョンセ」という制度は試練に立たされている。チョンセ制度が今度どのようになっていくのか注目が集まっている。

(了)

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