韓国経済ウォッチ~韓国輸出の急減
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国の今年8月の輸出額は393億3,000万ドルで、前年同月対比で14.7%も減少し、減少幅としては6年ぶりに最大の記録となった。世界金融危機が発生した直後の2009年8月に韓国の輸出はマイナス20.9%を記録したが、今回の輸出減少はそれに次ぐ最大の減少ということになる。
実は韓国の輸出は、今年の1月から減少に転じ、8月までずっと下落し続けていた。韓国政府は、下半期には輸出が持ち直すだろうと密かに期待していたが、今回の産業通産資源省の発表は、それを裏切る結果となった。なお、今回は減少幅が大きいので、今年の経済成長目標である3%の達成は、厳しいのではないかという観測まで流れている。
このような結果になった背景としては、原油価格の下落、船舶引渡しの遅延、中国天津港湾の爆発事故などが輸出減少の原因として挙げられている。それでは、1つずつ詳しくみてみよう。
去年8月の原油価格は、バレル当たりドバイ油で101.94ドルであったのに対し、先月は47.76ドルまで下落し、石油化学業界には大きなダメージになっている。
石油化学分野は、韓国の最大輸出品目の1つで、全体輸出の20%くらいを占めている。石油製品の輸出は、前年同期対比で40.3%の減少を記録し、石油化学製品の輸出は、前年同期対比で25.7%を記録した。この比重の高い品目の輸出減少は、韓国輸出の減少に大きく影響している。とくに問題なのは、実は輸出量はそれほど減っていないが、価格が下落することによって、全体の金額が減少している点である。今後、もう少し原油価格の下落が続けば、製油会社は大量在庫を抱えることになり、大きな損失を出す恐れがあると業界では指摘している。
製油会社だけでなく、石油化学業界も似たような状況に置かれているようだ。高密度ポリエチレンの価格は、去年に比べ27.4%も下落している。価格が下落しただけならまだいいが、中国景気の減速で、輸出量も伸び悩んでいる。
原油価格の下落は、いろいろなかたちで韓国輸出に影響をおよぼしている。原油価格の下落で収入が減った産油国は、建設発注を減らし、韓国の建設業界にとって受注減につながっている。また原油価格の下落は、油田開発の収益性の減少を意味するので、原油生産を控えることになり、海外原油生産会社から海上での石油堀削するためのドリルシップ(通常の船体上に堀削装置を搭載している船舶)の引き渡しの延期の要請が相次いで、造船業界にとっては、11億ドルの代金の引き受けが見送られたことになった。
それに最近、中国経済の失速が懸念されているなかで、中国の天津港湾で起こった爆発事故は、一部品目の中国輸出に阻害要因として働いている。天津港湾の爆発事故が処理されるメドが立つまで、輸出の懸念材料にならざるを得ない。今回の輸出減少は、原油価格の下落、中国経済の失速などの外部要因によるもので、コントロールできない要因であるため、韓国政府も悩みが深いのである。
韓国経済のファンダメンタルは過去より強くなったとはいえ、このような二重、三重の課題山積に、韓国政府は対応に追われている。景気を活性化する方法を打ち出し、韓国経済を低成長に陥ることがないようにする必要がある。
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