2024年12月23日( 月 )

日本ゴルフツアー機構のクーデター劇の顛末 主役はABCマート創業者(後)

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 今春、男子ゴルフのプロツアーを統括している(一社)日本ゴルフツアー機構(JGTO)で内紛劇があった。

 ゴルフファンの注目を集めたのが、靴小売最大手エービーシー・マート(以下ABCマート)。男子ゴルフ界のスーパースターである青木功会長を追い落とすために、副会長でABCマートの創業者・三木正浩氏がクーデターを仕掛けたからだ。三木氏が退任したことでひとまず決着した。男子ゴルフ界を揺るがしたクーデター劇を振り返ってみよう。

成功の跳躍台はホーキンスブーツ

霧のゴルフ場 イメージ    ゴルフファンを震撼させたクーデターで、一躍、時の人となった三木正浩氏とはいかなる人物か。立志伝中の人物として知られる。

 1955年7月26日、三重県伊勢市生まれの67歳。名古屋市立享栄高校、東邦学園短期大学に進む。卒業後、スクエア・ジャパンに入社する。85年、東京・新宿区早稲田で靴と衣料品の輸入商社・国際貿易商事を設立した。

 ABCマートの起爆剤になったのがホ-キンスブーツである。当時の日本では、ブーツの主流は高価なブーツだった。値段の安いブーツはデザイン性が悪かったため敬遠されていた。ホーキンスのブーツはデザイン性に優れていて、値段もお手軽だった。

 29歳のとき、何を輸入するかのネタ探しにヨーロッパを訪れた際、ロンドンでホーキンスブーツを見つけて、これは日本で売れると直感した。三木氏は単独でホーキンス社に出向き、粘り強く交渉した。その結果、86年ホーキンスの国内総代理店となった。

 90年に(有)エービーシー・マートを設立して小売業に進出、上野アメ横など4店舗を出店。91年、スニーカーのバンズの国内総代理店。94年にバンズの商標使用契約を結び、翌年ホーキンスの商標使用権を取得するなど、海外ブランドの自社ブランド化を進めた。

 2000年にジャスダックに株式を上場(現・東証プライム)すると、02年に卸売業から小売業に転換。社名も(株)エービーシー・マートに変更した。ジョキングブームによるスニーカー人気を追い風に靴小売業トップへ駆け上がっていく。

三木氏は米フォーブス「日本の富豪50人」の常連

 ABCマートの23年2月期の連結決算は、売上高は前期比19%増の2,900億円、純利益は74%増の302億円だった。新型コロナウイルス影響が和らぎ、国内で人の動きが活発になり旅行やレジャーなどでアウトドア系シューズの需要が伸びた。22年10月に水際対策が緩和されインバウンド(訪日客)の消費が伸びていることも追い風になった。

 好業績で株式市場の評価は高い。小売業の時価総額ランキング(5月12日時点)によると、ABCマートは6,578億円で9位。コンビニのローソン、百貨店の三越伊勢丹HDより上だ。

 三木正浩氏はABCマート株の25.9%保有する筆頭株主。2位が一族の資産管理会社イーエム・プランニングの25.0%、3位が三木美智子氏の11,4%。ファミリーで62.3%(22年8月中間決算時点)を保有する大株主だ。米誌フォーブスの22年版「日本の富豪50人」では、三木氏の資産額は3,900億円で13位だ。

 三木氏は馬主だ。今年4月30日に京都競馬場で開催されたGIレースの天皇賞(春)で三木氏がオーナーのジャスティンパレスが優勝し、優勝賞金2億2,000万円を獲得した。そんな大富豪の三木正浩氏だが、男子ゴルフツアーを運営するJGTOで仕掛けたクーデターが失敗に終わり、晩節を汚した。

(了)

【森村 和男】

(前)

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