原発の60年超え運転が可能となるGX電源法が成立
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原発の60年を超える運転が可能に
原子力発電の60年を超えた運転を可能とする「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(グリーントランスフォーメーション脱炭素電源法、以下、GX電源法)」が5月31日、参院本会議で可決され、成立した。
2011年の福島第一原発事故を受けて、2012 年6月に原子炉等規制法が改正され、原発の運転期間は原則40年、最長60年と定められた。最長60年とは、原子力規制委員会の認可を受ければ、原発を運転できる期間40年に加え20年までの延長が認められるという意味である。
しかし、GX電源法では、原子力規制委員会の再稼働審査、裁判所の仮処分命令、安全規制に関する制度・運用の変更などによる停止期間分を原発の運転期間から除外することで、実質的にこれまでの上限であった60年を超える運転ができるようになる。除外期間の認定基準は法律で定められていないため、これから経済産業省が具体的な基準づくりを進めていく。
原発の安全性への懸念
原発の運転延長の認可はこれまで原子力規制委員会が行ってきたが、今回の法改正により、経済産業大臣が行うこととなる。GX電源法には「原子力の活用」が掲げられており、原発の安全性より推進政策が重視されるのではないかと懸念する声は高い。
一方、30年を超えて運転する原発の安全性審査に関しては、原子力規制委員会が最長10年ごとに設備の劣化に関する技術審査を行い、認可することが定められた。
今回成立したGX電源法は、これまでの電気事業法(電事法)、再生可能エネルギー特措法、原子力基本法、原子炉等規制法(炉規法)、原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律(再処理法)の5つの法律を1つにまとめたものだ。同法律により、国の産業・エネルギー政策が大きく転換される。
2021年に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、福島第一原発事故を教訓として、「可能な限り原発依存度を低減する」「原子力については安全を最優先する」としてきた。しかし、GX電源法では原子力の活用が掲げられており、原発のリスクに向き合うことが置き去りにされている印象を受ける。
原発の廃炉が本格化
GX電源法では、今後全国の原発で廃炉が本格化することを見据え、原子力事業者(電力会社)に対して廃炉費用のための拠出金を使用済燃料再処理機構(NuRO)に拠出することを新たに義務付けた。廃炉には約30年もの長い年月と莫大な費用がかかることにかんがみてのことである。
福島第一原発事故以降、安全基準が新たに定められたことを受けて、原発を廃炉にする決定が相次いだ。現在、全国の原発約60基のうち18基が廃炉となることが決定しており、原子炉解体など濃度の高い放射能廃棄物が発生する作業は20年代半ばに本格化する見通しだという(経済産業省「着実な廃止措置に向けた取組」、22年5月30日)。
加えて、美浜原発3号機(福井県)など40年超えの原発が全国に4基あり、30年以内にはこれらの原発の廃炉作業が必要となる可能性がある。廃炉費用も考慮すると、原発は決して「コストの安い」電源ではないはずだ。
【石井 ゆかり】
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