2024年12月22日( 日 )

『脊振の自然に魅せられて』番外編「白馬に集う」(後)

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 3日目早朝、部屋の少し開いたカーテン越しにわずかに差し込む白々とした夜明け光が筆者の目を覚ました。時計を見ると4時30分である。白馬は福岡より東にあるので夜明けが早いのである。山は見えるか? 同室の Wの寝息を気にしながらガラス戸を静かに開け、ベランダへ出てみた。ホテルの広い庭越しに残雪の白馬岳が白みかけた空に浮かんでいた。「やったー、今日は山を見られる」と期待が膨らんだ。早朝の温泉に肩まで浸かり、今日は山に会えるとウキウキしながら50年前を偲びやった。

 早めの朝食(バイキング)を済ますと、ゴンドラの終点駅は標高も1,300m近いので寒さ対策のダウンもザックに入れ、ホテル発のバスを仲間たちとロビーで待った。ゴンドラの往復2,400円のチケットをホテルで購入すると、150円ほど安くなるのでクレジットカードで購入した。

白馬岩岳(はくばいわたけ)ゴンドラへ

白馬岩岳(1,289m)からの展望
白馬岩岳(1,289m)からの展望

 ゴンドラは様々なスキー場で乗り慣れている乗り物である。背を屈めて乗り込むと小型のゴンドラは急傾斜をグングン登ってゆく。同乗の女性Uは怖いのか手すりを握りしめていた。5分ほどで山頂についた。早く山に会いたいと思いながら動画カメラのGoProを手に展望台へ向かう。途中、ツアーガイドらしき女性に出会ったので「展望できる場所は何処ですか」と尋ねた。教えてもらった展望台へ急ぐ。

 群青色の空のなか、白い残雪を被った北アルプス後立山連峰の2,900m近い山々が眼前にどっしりと聳えていた。筆者の胸の鼓動は感動で鳴り止まない。展望台のベンチには平日にも関わらず大勢の人たちの見学者で賑わっていた。老いも若きも、それぞれの思いで山の景色を楽しんでいた。赤ん坊を連れた若い夫婦や、犬をつれた人まで。動画カメラのGoProに山の全貌を入れ、ゆっくり回して撮影した。

 展望台のレストランのガラス窓に山全体が写し込まれ映画館のスクリーンのように映えていた。眼前の山々の勇壮な姿に魅了され、時間はゆっくりと過ぎて行った。仲間たちもそれぞれ北アルプスのすばらしい景色を楽しんでいた。体調不良で参加できなかった女性Tに電話を入れ、今からLINEで中継しますと連絡した。学生時代に共に汗を流した仲間に何としてもこのすばらしい景色を見せたかったのである。スマホの画面に現れた仲間の顔や勇壮な山の姿に、声を上げて喜んでいた。

 休憩場所のベンチからは筆者が新婚旅行で訪れた八方尾根スキー場が目の前に開け、その奥に鹿島槍ヶ岳の釣り尾根が雲の合間に見えていた。

 白馬岳(2,932m)―杓子岳(2,812m)―白馬鑓ヶ岳(2,903m)-唐松岳(2,699m)―五竜岳(2,814m)―不帰キレット(切れ込んだ岩)―鹿島槍ヶ岳(2,899m)―扇沢(黒部ダムの入り口)を後輩2名と56年前に歩いたのだ。

 感無量であった。思えば結婚前の妻に旅費を借りて歩いた場所である。

鹿島槍ヶ岳(2,889m) 手前の開けた所が八方尾根スキー場
鹿島槍ヶ岳(2,889m) 手前の開けた所が八方尾根スキー場

 同期のなかでは足腰悪い者もいるけど白馬に来られたことはすばらしいことであった。また、山好きで部活の顧問であった T先生も我々に混じって青春の思い出を堪能されたように思えた。観光の途中で土産を忘れた、帰りのリムジンバスで道の駅に財布を忘れたなどのトラブルもあったが、ことなきを得て旅は終わった。松本発の福岡行きの機上から、北アルプスや南アルプス、富士山の展望を楽しみ、琵琶湖上空からは花の百名山:伊吹山も眺めることができた。

 来年は福岡集合となったが、1人も欠けることなく、また集まりたいと思っている。

 「すばらしき脊振の四季」出版に全員がクラウドファンディングで応援してくれた。すばらしい仲間たちである。

白馬岩岳にて 仲間たちと記念写真
白馬岩岳にて 仲間たちと記念写真

(了)

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(前)

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