【論考】社会はすでに変化している〜LGBT法案・福岡同性婚訴訟にみる現在の日本の姿(前)
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性的マイノリティに関する議論が
「やっと」活性化2023年に入ってから、LGBTをはじめ性的マイノリティに関する議論が活性化している。その質に関する評価はさておき、まずは議題として取り上げられるようになったことそれ自体について、評価したい。
目下注目を集めているのが、性的少数者への理解増進を目的とする法、いわゆる「LGBT理解増進法」(以下、LGBT法案)成立に向けた動きだ。与野党から3案が提出され、差別禁止条項や「性自認」と「性同一性」という表現、性的多様性に関する学校教育についての記述などが争点となっていたが、9日に与党案の修正案が衆議院内閣委員会において可決、13日には衆議院本会議において可決された。
LGBT法案は、すでに2021年、かねてより挙がっていた同性婚や性的マイノリティの人権尊重を求める声に応えるかたちで、国会で提起されていた。現在討議されているものと同様のものであるが、そのときは廃案となった。
2021年と現在、共通するのは
「大きなイベントを控えていること」2021年にこの議論が加速したのは、当時、わが国がオリンピック開催を控えていたからである。オリンピック憲章の定める「オリンピズムの根本原則」のひとつに、「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」というものがある。日本国内ではパートナーシップ宣誓制度を設ける自治体が増加する一方、国家として性的マイノリティの人権を守る法律は存在しない。これでは日本がオリンピック開催国としてふさわしいとはいえないのではないかと、法整備に向けた検討が始まったのである。しかし、その後与野党間での認識の違いなどから協議は進まず、衆議院の解散により廃案となった。
そして今回は、G7サミットの広島開催が契機になった。議長国であるにもかかわらず性的マイノリティに対する取り組みが進んでいないことが問題視されたのだ。また、2月に岸田首相元秘書官による問題発言もあり、岸田政権が掲げる「多様性が尊重される社会づくり」の実現に向けてどのような施策が取られるのか、注目が集まっていた。
福岡同性婚訴訟
「違憲状態」判決はまずまずの結果そんななか、福岡においても動きがあった。福岡地裁が8日、「結婚をすべての人に」訴訟にあたり、「違憲状態」判決を下したのだ。
現行の法律において、同性婚が認められていないことの違憲性を世に問う訴訟の一環である。2019年2月、札幌、東京、名古屋、大阪の各地裁において一斉提訴。福岡では2019年9月、原告である福岡在住の同性カップルと20名の弁護士から構成される弁護団によって提訴された。以来審議を重ね、順次判決が下されていた。
21年3月には札幌地裁で、先月30日には名古屋地裁で「違憲」判決が下された。一方で、東京地裁における一次訴訟では22年11月、一部「違憲状態」と認めるものの全面的にはそうとはいえないとの判決が出されたほか、22年6月の大阪地裁の判決は「合憲」。結果として、「違憲」または「違憲状態」の判決が4件、合憲判決が1件という地裁判決に終わっている。こうした結果を受けて、一部で控訴が行われ、札幌高裁、大阪高裁、東京高裁では審議が続いている。
福岡地裁での判決後、原告団はマスコミや一般向けに記者会見を開いた。原告団はそこで「違憲状態」が認められたことを評価する一方、婚姻に対する社会通念や国会の立法裁量などを理由に事実上「合憲」という着地となったことに遺憾の意を表明し、同性婚の法制化の日まで活動を続けることに強い意欲と覚悟を示している。
「婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであり、婚姻により与えられる重要な法律上の効果や国民の法律婚尊重の意識等を考慮すると、憲法24条1項の規定の趣旨に照らして尊重されるべき利益であることが認められる」
福岡地裁の判決(部分)。現行の法律が違憲状態にあることを認めている。
「憲法24条1項の『両性』及び『夫婦』という文言からは、同条が男女の婚姻を想定しているものと解さざるを得ない。」
福岡地裁の判決(部分)。現在の法律の範囲では同性婚を認めることができないことを示している。
(つづく)
【杉町 彩紗】
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