2024年11月22日( 金 )

『脊振の自然に魅せられて』「初夏の花たち」

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 梅雨になると脊振の花たちは初夏の花で賑わう。花たちは、晴天の時より曇天から小雨模様のほうが生き生きして瑞々しい。晴天時は太陽光線で花たちに影ができる。花の撮影は晴天より曇天のほうが影もできないので向いている。従って、筆者は梅雨時分の撮影は雨模様に出かけることが多い。

 6月14日(水)の天気予報では、登山口周辺は曇り時々小雨であった。この日を逃すと旬の花たちに会えるシャンスを逃す。思いきって登山準備をして山へ出かけた。福岡市早良区の奥地、椎原集落から椎原川に沿う狭い林道を車で登山口へ向う。

 3年前に早良区役所とともにリニューアルした大型登山地図が目の前にみえてきた。登山地図は笹の葉に囲まれ額縁に収まったように見えた。このままのほうがきれいだ。登山地図周りを囲んだ笹の葉を鎌で刈らないことにした。いつもの駐車スペースに車をとめ、登山靴に履き替える。

 笹で覆われた登山道を進む。時おり小鳥の鳴き声が聞こえてくる。脊振の自然を愛する会で取り付けた表示板まで歩くこと15分。沢の縁に着いた。この場所はやや広く、休憩するには最適な場所である。私の写真集「脊振讃歌」の1ページを飾った、ヒメレンゲを撮影した場所でもある。

 椎原川の上流は、水量が豊富で夏には沢登りも何回もした。春の初め、白いタムシバが沢向こうに咲き登山者を楽しませてくれる。対岸に、1本のヤマボウシの木がある。この日の目的は、ここのヤマボウシに会うことである。はたして、花は咲いているだろうか。

純白の花をたくさん付けたヤマボウシ、雪を被った様に見えた ​​​​​​​(写真では伝えきれない)(秋には赤い実をつける)
純白の花をたくさん付けたヤマボウシ、
雪を被った様に見えた
(写真では伝えきれない)(秋には赤い実をつける)

 心をときめかせ、この場所に着いた。なんと、私を待っていたかのようにヤマボウシが枝いっぱいに花をつけ、雪を被った様に木は真っ白であった。感動の対面である。20年近くここまで来ているが、これだけの花を咲かせたことはなかった。ザックからカメラを取り出して撮影の準備をする。

 この感動を表現できれば良いがと、念じながらシャッターを押す。念の為、スマホでも撮影した。スマホでは露出やシャタースピードを気にすることがなく撮影できるので、時には便利である。50代のとき、この木に登ってヤマボウシの花を上から撮影してみたことがある。花ビラは空に向かって広げているから、下からは花ビラの撮影ができないからである。

沢沿いの花たち

 ミツバウツギは種となり細い枝にぶら下がり、沢ではウリノキが細い蕾をつけて風に揺れていた。今年は数が多く、すでに花が咲いたものもある。この花の先端はクルッと丸まって独特のかたちをしている。神社に下がっている房のようだ。ときおり蜂が蜜を吸いにやって来る。

ウリノキの花 花弁が丸まる(葉がウリの葉に似ているところからこの名前が付いた)
ウリノキの花 花弁が丸まる
(葉がウリの葉に似ているところからこの名前が付いた)

 枝分かれした沢の休憩ポイントにやってくると、遠方に白い花を付けた樹木を目にした。ヤマボウシである。左右に大きな幹が2本、仲良く並んでいる。2本とも純白の花をたくさんつけて輝いていた。きれいだなー! 花が曇り空のなかで花びらが瑞々しく佇んでいた。最初の沢の場所といい、この場所のヤマボウシといい純白の花びらを付けた木に遭遇したことはない。腰を下ろし、目の前の沢の音を聞きながら、しばらくヤマボウシを眺めていた。

 矢筈峠方面へ登山道に足を進めた。すると男女の2人連れが下ってきた。2人のため登山道を譲った。すると男性が「おい」と声をかけてきた。なんと脊振の自然を愛する会の副会長でワンゲルの1年先輩Tであった。筆者と同じく花を見にきていたのである。

 連れの女性は山歩きの弟子である。「こんにちは!」と彼女も可愛い声をかけてくる。
「今年のヤマボウシは、すごかな!」とはTの弁である。先輩と筆者は共に純白のヤマボウシに感動していたのである。「ハンショウヅルは1個しかなかったばい」とT。筆者は「見にくるのが1週間遅いよ、先週は100個ぐらい咲いていたよ」と告げた。

ハンショウヅル(半鐘をイメージした名前)
ハンショウヅル
(半鐘をイメージした名前)

 この先輩は、筆者が昨年夏に別ルートで落とした三脚を拾ってきてくれたあり難い方でもある。やがて、2人は山道を下って行った。筆者はハンショウヅルの確認に、山道を登った。

    10分も歩くと、ハンショウヅルの場所に着いた。ハンショウヅルの蔓にかたちの良い花が1個だけ見やすい場所に下がっていた。もう少しあるはずだが、あたりを見回す。見頃を過ぎた花が10個ほど蔓に下がっていた。ハンショウヅルは花が咲き終え、キンポウゲ科の特徴である髭をつける。そのころにまた会いにこよう。

 小雨が落ちてきたので、急いでカメラをザックに仕舞って山道を下った。登る時に、見落としていたウグイスカグラの赤い実をやっと見つけ撮影した。このルートに1本しかない小さな樹木である。10数個実を付けていた。大きな樹木の影になり薄暗いので撮影に苦労する。何とか撮影を終えた。

 帰り道、第一休憩ポイントにある雪を被ったような純白のヤマボウシを再び眺めた。「たくさん花を付けてくれて有り難う」と、筆者はヤマボウシに別れを告げた。梅雨時分の花たちに会え、満足した山歩きだった。

ウリノキの花 花弁が丸まる(葉がウリの葉に似ているところからこの名前が付いた)
ウグイスカグラの実、春にピンク色の花が咲きます
(ウグイスが鳴き始めるころに咲くから名前が付いた)

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

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