2024年12月23日( 月 )

水素は本当に未来のエネルギー源になるのか(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

温室ガス問題の解決策

水素 イメージ    世界の温室効果ガス排出の大きな原因は化石燃料の燃焼によるもので、電力のほとんどは石炭や石油、天然ガスなど、化石燃料を燃やすことでつくられており、それによって二酸化炭素などが発生し、大きな問題となっている。世界的に産業化が進められてきた現在、大気中の二酸化炭素の濃度は、産業化以前に比べて大幅に増加しているとされる。

 そのため、二酸化炭素の削減を目指す脱炭素の政策は、各国の主要懸案となっている。そのような状況下で、世界が注目しているエネルギーシフトの方向性は大きく2つある。その1つは自然の力を利用してエネルギーを生産する再生可能エネルギーへのシフトで、もう1つは、水素に化学反応を起こして電気を生産する水素エネルギーの活用である。

 再生可能エネルギーの場合、コストが高く、国によっては環境的な制約などもあるなか、水素エネルギーはもしかしたら未来のエネルギー源になれるのではないかと期待し、先進各国はインフラ投資などに拍車をかけている。しかし、水素は環境に優しく、脱炭素に寄与できるエネルギー源として期待はされているものの、水素も生産コストの問題や技術的な課題も抱えていて、水素は未来のエネルギー源になれないと否定的な見方もある。

水素とは

 水素は宇宙質量の75%を占めていて、最もありふれた元素である。地球表面の7割を覆っている水にも、水素は入っている。そのため、水素は化石燃料のように枯渇する心配もない。ところが、空気中の水素の比重は0.00005%過ぎず、さらに水素は単独で存在しているケースはほとんどない。すなわち、水素を得るためには水素化合物にエネルギーを加えて、水素を分離しないといけない。

 水素は水素を分離する過程でかなりのコストが発生し、そのコストが水素をエネルギー源とするうえでハードルになっている。加えて、水素を得る過程で電気が利用されるので、水素はグリーンでも電気をつくる際に二酸化炭素など環境を汚染する物質を発生させるので、水素は本当は環境に優しくないと主張もある。

 水素を生産する方法はいくつかあるが、コストを安くするためには、どうしても二酸化炭素を発生させる方法を取らざるを得ない。生産された水素は、高圧ガスまたは液体で貯蔵されたり、運搬されたりするが、液化の過程にも多くの電気エネルギーが必要とされる。一方、水素は燃えやすい気体で、空気と混合した後、火花を散らすと爆発的に燃焼反応を起こす。

 従って、水素は適切にコントロールしながら燃焼させると、天然ガスのような燃料になれる。水素は発熱量において、石油より約3倍も高いエネルギー源でもある。なお、水素は燃焼の過程で、少量の水と窒素酸化物だけを発生させ、温室ガス発生の主犯の1つである二酸化炭素は発生させない。

 しかし、燃焼スピードが速く、燃焼時に爆発の衝撃が発生しやすい。現在水素は天然ガスを利用して生産されるケースが一番多く、製油会社、化学産業などで主に利用されている。水素生産の技術が開発され、コストが下がると水素の利用が増え、2050年には水素の消費量は5億トン超に上ることが予想されている。これは全世界エネルギー消費の約20%に当たる規模である。

(つづく)

(後)

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