2024年12月23日( 月 )

水素は本当に未来のエネルギー源になるのか(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

水素経済をめぐる各国の動き

 米国では今年からインフレ抑制法(IRA法)により、水素生産に対する税金の控除が適用される。欧州連合も今年からグレー水素とグリーン水素の生産価格の差額を政府が補助するなど、ロシアへのガスの依存度を下げるため、天然ガスから水素へのシフトを積極的に推進している。

 日本政府は水素自動車を中心に、水素を未来の有望エネルギー源と見なし、積極的に政策を推し進めている。2020年まで水素自動車を約4万台、2025年までに約20万台、2030年には約80万台を普及する計画を立てている。その他にも運搬、貯蔵のための新技術の開発や、家庭用燃料電池の開発なども活発に行われている。

 韓国も現代自動車、SKグループを中心に水素経済の早期実現のため、莫大な投資を計画している。

水素の運搬、貯蔵の課題

水素ステーション イメージ    水素を使うためには、水素化合物から水素を切り離すことが必要だ。水素を分離する方法はさまざまだ。現在一番多く使われている方法は、製油工場で炭素と水素で構成された天然ガスを改質する方法である。天然ガスの主成分であるメタンガスに水蒸気を反応させて水素を切り離す。

 世界最大の水素生産国である中国はこの方法で水素を生産している。たとえば、製鉄会社の製鉄燃料として利用されているコークスをつくるため石炭に熱を加えると、この時も水素が大量発生する。しかし、この方法は化石燃料を利用するだけでなく、その過程で二酸化炭素も多量に発生するので、水素の長所は帳消しされることになる。このようにして生産された水素だが、利用するためには運搬と貯蔵が必要になる。

 電気を貯めるために電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵する電池が利用されているが、電池は仕組み上、どうしてもエネルギーの損失が発生する。ところが、水素はタンクなどに直接貯蔵できるため、電池に比べてエネルギーの損失は少ない。水素は利用するときに、そのまま利用されることもあれば、電気にして利用される場合もある。水素を効率よく運搬するため、水素の気体を冷却して液体に変えて運搬する。

 水素を液化すると、体積は800分の1にできる。しかし、液化のためにはかなりのエネルギーが必要になるので、このようなコストが水素普及のハードルとなっているのが現実だ。水素が未来のエネルギー源として普及するためには、生産コストの削減だけでなく、運搬や貯蔵の過程でかかるコストの問題も解決しないといけない。

 水素自動車の普及にも、水素ステーションなどインフラの整備が急務であるが、水素ステーションの建設には、従来のガソリンスタンドと違って莫大な投資が必要なため、政府が政策として推進しない限り、なかなか普及しない恐れもある。水素社会に向けて各国が活発に動いてはいるものの、計画より遅れていることも現実だ。グリーンエネルギーである水素の未来を拓くために、今後技術のブレークスルーが期待されている。

(了)

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