2024年12月22日( 日 )

ビッグモーターの闇(2)創業者は息子の後継者育成に失敗!!(前)

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 「虻蜂取らず」(虻も取らず、蜂も取らず)という諺がある。あれもこれも両方を狙って、どちらともダメになること。あまりに欲を深くしてかえって失敗する。ビッグモーターの創業者、兼重宏行社長の記者会見は、引責辞任することで幕引きを意図したものだが、終始バカにしたような口ぶりで、かえって火に油を注ぐ結果を招いた。表に出したくなかった息子、宏一副社長の”暴君”ぶりが次々とあぶり出された。

まるで他人事のようなお粗末な会見

記者会見 イメージ    損害保険会社に保険金を水増し請求していた中古車販売大手のビッグモーター(東京都港区)の兼重宏行社長は7月25日、都内で記者会見を開き、自身と長男の兼重宏一副社長が引責辞任し、後任社長に和泉伸二専務を昇格させる人事を発表した。

 テレビが会見を放映していたが、不正は「工場長の指示でやったんじゃないか」と、部下に責任をおしつけて、「天地神明に誓って不正は知らなかった」と自身による不正への関与を否定した。質問に対して、半笑いで「それは許せませんよね?」「普通はやりませんよね?」と他人事みたいな返答しかしていない。自分に経営責任があるとは、露ほども思っていないのだろう。

 引責辞任するのだから、これ以上追及することはやめにしましょうという意図がミエミエだ。何か不祥事があると、経営トップが謝罪会見を開くのが恒例となっているが、兼重社長の会見は「お粗末」なケースとして後世に名を残すかもしれない。

 会見には、「A級戦犯」と名指しされている、息子の宏一副社長は出席しなかった。父親である自身による不正関与の全面否定と、息子が矢面に立たされることを阻止するという2つの狙いがあったが、2つとも失敗した。まさに「虻蜂とらず」だ。

息子の宏一副社長が主導した異常な降格人事

 報道各社は宏一副社長についてどう報じたかを見て見よう。数年前からビッグモーターの経営問題を追求してきた産経新聞は『息子の宏一副社長の異常人事』(7月25日付)のタイトルで報じた。

 外部弁護士で構成する特別調査委員会の調査報告書によると、ビッグモーターでは過度に重視した昇格人事が行われる一方、明確な説明がないまま降格させられるなど異常な人事が常態化。降格人事は、社長就任が確実視されていた宏一氏の判断で行われていると指摘した。

 宏行社長の会見では息子の宏一副社長について質問が相次いだ。

 〈宏一氏の仕事ぶりについて、「一生懸命確かにやって、なんとか会社業績を上げようと動いているのはよくわかってました。それが行き過ぎになったのか、結構、理詰めで話をしますんで、それがプレッシャーになったんだなと、今となっては感じておりますけど」と述べた。

 宏一氏が今後再び経営に関与するかを問われると「今のところは考えていません。彼もそういう話をしていました」と否定した〉

 新経営陣から宏一氏による“反省の言葉”が次のように読み上げられた。

 〈「今回、お客様のためと思って体制を整えていた時についカッとなって強い言葉で降格という処分を行ったことに対し、あの時こういう風な形でいうべきではなかった〉

 自ら公の場で説明せず、“雲隠れ状態”になっている宏一氏。ネット上では「逃げるな」「息子も出てこい」という厳しい声が相次いだ。
 

(つづく)

【森村 和男】

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