支配・侵略の6000年の歴史の変遷~イタリア・シシリー島(8)
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最高に充実した日、2月24日 歴史の都市・シラクーサ
2月24日は幸先の良い1日になった。午前8時にはホテルを後にしてタオルミーナから南へ150キロの距離にあるシラクーサへ向かう。車で2時間ほどかかった。この都市は紀元前734年にはギリシャの植民地になっていることが記録されており、その後、シシリーの都市国家として繁栄してきた。港に恵まれ、海運業が盛んだったことが繁栄の源になったのだろう。
シラクーサには1泊する予定だ。まずは5つ星のグランドホテル、オールティージャに荷物を預けた。現在も港によって街は活況を呈しているようだ。またイタリア海軍の拠点でもある。
港には軍艦・海上保安船が接岸していた。もともと、湿地帯であったことで連接していた小島を埋め立てて都市部を拡張したのである。比較にはならないが、ベネチアの「ミニチュア版」と称えることでシラクーサの格を上げるとしよう。
街並みの写真を参照されたし。石づくりの佇まいから1600年前後の雰囲気を保っていると推定される。冬場の観光閑散時期ということもあり、人通りは少ない。ゆったりとしたものだ。猫たちは道路脇でぐっすり眠っている。人が近づいても安心して熟睡している様を目撃すると市民たちに日ごろから、よほど大切に扱ってもらっているのだろう。『猫の天国の都市=シラクーサ』と命名することにしよう。
シラクーサの西側、20キロの場所にネアポリス考古学公園がある。紀元前5世紀前後からの遺跡が数多くあり、最近、観光客が増加している。天国の石切り場、ディオニスュシオスの耳、ギリシャ劇場などの観光資源がゴロゴロしていることには驚く。これまた写真を参照されたし。シラクーサは上記したベネチアのミニチュア版の街並みとネアポリス考古学公園とを絡ませた巧妙な観光ビジネスで繁盛させているようだ。
ブラボー!!最高の地酒・地料理に乾杯
シラクーサから北西へ50キロ、山の中へと車を進める。山というよりも丘が連綿と続く。丘陵地帯には必ず葡萄の木、オリーブの樹木が立ち並んでいる。たまに放し飼いされている放牧牛たちが悠然と座り込んでいる光景を車窓から目にした。雄大であり牧歌的なシシリー島の田園風景である。
どこを目指したかというと地元の「農場レストラン」である。今回のツアーコースで切望したのが、「地酒(ワイン)と地料理(シシリー料理)」である。かつてフィレンツェ視察の帰りに、ある農家の庭先で「地酒・地料理」の歓待を受けたことがある。ワインは地下倉庫に蓄えられていたものであった。今でもこのワインの味が忘れられない。夜9時まで燥いでしまったので、ローマのホテルには午前様となった記憶が、いまだ鮮明に残っている。
バスの運転者が車を止めながら各農家の玄関口を眺めている。なかなか目的地が見当たらないのだ。原因はどの農家も観光レストラン業を営んでいるからで、どこもライバル関係にある。日本でいうところの農業の6次産業化のお手本となるものを展開しているのだ。
5件目でようやく目的の農家に到着した。ワンちゃんが吠えずにしっぽを振って歓待してくれた。その後をオーナー(男性)が愛想よく出てきた。50歳前後だろうか。
レストラン内は同時に70~80名が席に着けるテーブルが用意されている。室内はセンスの良い置物が配列してあり、お洒落な雰囲気を醸しだしていた。我々11人に対して終始、オーナーが1人で気さくに対応する。まず提供されたワインは10年物である。オーナーは、このワインが賞を貰ったことを自慢する。品質保証を訴えたかったのであろう。たしかにしっかりしたワインだった。全員が2、3杯飲み干した。
メインディッシュの料理が配膳されるまで多少時間がかかった。一口味わった名島夫人が「今回のツアーのなかで最高の料理だわ」と感極まったかのような大声をあげた。
田舎料理だからダサいというものではない。「シシリー創作料理」と評価して良いほど洗練されていた。おそらく若い料理人なのだろう。
オーナーの自慢話が始まった。「食材の大半はこの地元で調達している」とのこと。「近所では農業レストラン経営をやっておりライバル同士だ」と説明する。
「しかし、競争関係にあってもお互いに情報交換し、切磋琢磨しているからレベルが高まっている。競争しあって観光客が『またきたいなー』となればしめたもの」とのこと。
年間の客数は3,000~3,500人のようだ。客単価5,000円として、お土産を含めて売上は年間2,000万円前後だろうかと推定する。
食事が終わり陳列されている土産品を鑑定しながら店を去ろうとした。オーナーが送りだしの謝辞を述べる際に2匹の犬たちがしっぽを振りながら愛嬌を振舞うのには驚いた。
今朝の朝焼けを見たことと農業レストランで「地酒・地料理」に縁があったことで2月24日は今回のツアーのハイライトであったと自分に記した。
(つづく)
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