インフラを支える鉄道建設のエキスパート 歴史と実績で培った信頼を次世代へつなぐ
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三軌建設(株)
創業61年の歴史
三軌建設(株)は主に軌道部門を中心に土木部門、建築部門の3つの部門で事業を展開する、JR九州グループのゼネコンだ。同社は、1962年に戦災復興の促進を目的として設立され、福岡を拠点に九州・関西・関東圏に支店や営業所を設置している。
主力である軌道部門は、全国の公営鉄道や私鉄における鉄道線路の建設や保守工事、新幹線軌道建設工事などを手がけており、海外でも台湾新幹線や中国広州地下鉄などの技術支援を行い、実績を積み重ね、確固たる地位を築いている。このように同社は公共輸送の安全・安心・快適を支える重要な役割をはたしている。土木部門では道路、上下水道、河川、通信などの工事、建築部門では駅舎や事務所、病院、住宅、工場などの建設を手がけている。
同社常務取締役・今村正純氏は、「コロナ禍の期間中は社会全体が混乱していましたが、当社でも多くの問題に直面しました。しかし、過剰な悲観的見方に陥る必要はありません。当社は今期、北海道新幹線の土木工事を受注しました。工期は4年間であり、社員たちも視野を広くもって現状を分析しているため、不安を感じる必要はないとわかってくれています」と語る。
同社はJR九州グループの一員であることもあり外部からの信頼度が高い。受注はJR九州をはじめとする全国の公共事業や準公共事業を中心としている。経営も安定しており、過去5年間の経常利益は上昇傾向にある。今後、九州での受注は減少が見込まれることから、首都圏・関西圏での受注拡大、新規顧客獲得に注力している。
進む働き方改革と社員教育
業界全体が人材確保に苦労しているなか、同社では2023年度に新卒9名が入社した。高卒のみの採用で、工業高校から優秀な生徒を選抜し、良い人材をそろえたという。かつては離職率が高い時期もあったが、近年は大きく低下し、安定している。今村氏は近況について、「退職をするのは、入社して1、2年目の社員が主です。10年以上勤めていれば、その後に離職することはほとんどありません。近年、離職率が低下した理由の1つに、当社社長の現場視察があるかと思います。社長はフットワークが軽く、時間があれば現場へ向かい、管理職だけでなく一般社員からも直接話を聞くようにしています。聞いた話は共有され、必要があればその都度対応するので、社員の不満などが積み重なることは、少ないですね」と語る。
同社には労働組合はないが、懇話会が同等の役割をもつ。給与体制をより社員の頑張りに見合うものにしようと、積極的に見直しを行ったことで、ここ数年は社員全体の満足度が上がっており、出てくる要望も減ったという。福利厚生の面では、一般的な制度はもちろん、社員旅行や忘年会のほか、受注元でもあるJR九州の列車関連の行事に参加するなど、業界ならではのユニークなものがある。
24年4月以降、建設業界でも残業時間の上限規制が導入されることから、管理システムの強化を進めている。労働環境は業界全体で以前より大きく改善されており、土日休み、年休取得制度はすでに実現されている。現場の進捗状況によっては難しいケースあるが、国土交通省などはこうした背景を踏まえて工期の設定について考慮するようになっており、計画的に代休を取るなどの対応が可能になっている。
今村氏が「我々の業界に対して昔の3K(きつい・汚い・危険の総称)のイメージをもっている人もまだいるかもしれません。 しかし、働き方改革が進み、労働環境は大きく改善されています。一見スマートにみえるのは建築だと思いますが、土木も非常に面白いです。大規模工事では完成時の喜びもその分大きいです。真面目に取り組んでいれば、早くて12、3年くらいで所長の役職に就くことも可能であり、目標も立てやすいと思います」と語るように、新入社員もキャリアプランを描きやすい。同社では基本的に全員に1級土木施工管理技士の資格取得を求めており、同社が初回の受験費用を負担するほか、合格すれば資格手当も出ることから、皆勉強に励んでいるという。
今後について、「社員1人ひとりが日々研鑽を重ね、会社の発展と幸せな未来を目指し、社会にも貢献する」という経営理念の下、基本的な礼儀作法から教えることができるように、社内の教育体制を整える計画を立てている。
また、社員のニーズをめぐって、定年以降の再就職、男性の育児休暇取得や介護と仕事の両立など多様化が進み、それにともないワークスタイルが変化していくとして、それらへの対応も必要になると予想して動いている。
変化の癖をつけなければ、成長はない
同社は、24年のテーマについて「変」を掲げている。社長は年始の挨拶において「変化がないと、成長しない」という言葉からスタートしたという。変化する、チャレンジする、という癖を若い時からつけていないと、年齢とともに気力も落ち、機会も減っていくと危機感をもっている。
近年は若年層の地元志向が強く、異動に対する意識も変わってきたという。多様な働き方が求められる時代であることから、待遇面との兼ね合いを考えつつ、将来的には、グローバル採用や地域限定のブロック採用など多様な異動形態も検討する方針だ。
今村氏は異動の利点について、「私は若いときに転勤を10回以上経験しました。もちろん最初は不安だったり、気が進まなかったりしますが、徐々に慣れて面白くなります。自分から動くことが苦手であっても、異動という強制力で後押しされると、自然に変化の癖がつきます。できれば考えが柔軟な若いときにこそ、転勤という経験を積んでほしいですね」と異動には利点もあることを語る。
実際、東京や大阪に異動した人は、最初こそは戸惑うが、しばらくすると「楽しんでいます!」と口をそろえて話すのだという。仕事以外の体験もたくさんでき、その後の人生に役立つことは間違いない。変化に対する抵抗が少ない人は、吸収も成長も早いという。前向きに成長を続けた人の先には、インフラを支える鉄道建設のエキスパートとしての重要な役割と、そこからしか見えない景色が待っているだろう。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:松本 喜代孝
所在地:福岡市博多区東光寺町1-13-5
設 立:1962年1月
資本金:1億1,000万円
TEL:092-441-5421
URL:https://www.sankikensetsu.com
<プロフィール>
今村 正純(いまむら・まさずみ)
佐賀県出身。横浜国立大学工学部土木学科卒業後、1985年に日本国有鉄道入社。87年、民営化にともない九州旅客鉄道(株)へ。2018年に三軌建設(株)常務取締役管理本部長に就任、現在に至る。趣味は水泳、写真撮影。法人名
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