2024年07月16日( 火 )

車載電池市場は半導体市場をしのぐ大きな市場になるのか(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

電池市場の特性と将来性

電気自動車 イメージ    電池には大きく分けて2種類ある。1度しか使えない「一次電池」と、充電して繰り返し使う「二次電池」である。車載電池は二次電池である。二次電池は充放電を繰り返すため、正極材、負極材、電解質、セパレータで構成されている。これらのうち、原価の52%ほどを占めるのは正極材である。正極材は電池の性能を左右するエネルギー密度や電圧の決め手となる。

 電池製造には「白い石油」とも呼ばれるリチウムをはじめ、ニッケルやコバルト、マンガンなどの鉱物が大事であるが、そうした必要鉱物の7割以上は中国で採掘されている。車載電池の需要増加とともに、リチウム価格も1年で10倍も跳ね上がっている。これが電気自動車の普及の足かせになるのではないかと危惧する声もある。

 現在は中国が電気自動車の最大の市場となっているが、米国では大型トラックなどの需要が多く、搭載される電池の量という観点からすると、今後米国が世界最大の車載電池市場になるだろうと予測されている。そのような状況下、覇権をかけて中国企業を排除したい米国市場では、韓国企業が有利な地位を築くことになると思われる。

 世界的に見ると、自動車市場は大きく、しかも鉱物の価格高騰で電気自動車はそれほど値崩れを起こさないため電池を生産する企業の売上高は大きく伸長し、韓国でもサムスン電子に代わってLGエンソルが代表的企業となるだろうと予想されている。実際、車載電池市場に対する韓国企業の期待は大きく、受注残高も1,000兆ウォンに近いなど、電池企業は堅調に成長を示している。電池の製造は中国、日本、韓国に集中しているが、価格や素材は中国がリードし、コア技術と品質管理は日本が優位。韓国は電池の製造部門で競争力があると評価されている。

期待が膨らんでいる電池市場

 世界の車載電池市場は年平均で36.7%ずつ成長し、2025年には1,600億ドルに達すると言われている。しかるに、メモリ半導体の市場規模は現在、1,600億ドルである。つまり、車載電池市場は韓国の輸出の最大の輸出品目であるメモリ半導体に比肩するほどの規模に成長することが予想されているのだ。しかし、車載電池は原料が占める割合が高く、半導体ほど収益を上げるのは難しいという指摘もある。それに、韓国の車載電池は原料を中国に依存しすぎており、それも課題だと言われている。

 車載電池の主要部品である正極材は、韓国企業が世界をリードしている。エコプロという韓国のEVバッテリー関連企業は1年間で株価が10倍以上も上がり、先週は株価110万ウォンを記録するなど、株式市場もヒートアップしている。韓国の鉄鋼産業を牽引してきた製鉄企業のポスコも、数年後にはリチウムイオン電池部門の売上高が鉄鋼部門の売上高を上回ると予想されるほどである。

 電気自動車時代の到来とともに、自動車産業にも大きな変化の波が押し寄せ、車載電池市場の成長に大きな期待が寄せられている。現代自動車が世界3位の自動車メーカーを目指して急成長を遂げつつあるいま、韓国の車載電池企業がどれほどの躍進を示すか、大いに期待したいところだ。

(了)

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