2024年11月24日( 日 )

国連の未来、日本の安保理常任理事国入りはあり得るか?(前)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

国連本部 イメージ    このところの異常気象や自然災害に加え、終わりの見えないウクライナ戦争を目の当たりにすれば、地球や人類の未来は危ぶまれるばかりです。国連で軍備管理の仕事に長年携わってきたスコット・リッター氏は、「2023年は人類が地球で生きる最後の年になるだろう」と断言するほどまで危機感を露わにしています。

 彼曰く、「今や世界は核戦争の瀬戸際に立たされている」。折しも同氏が思い起こすのは、キューバ・ミサイル危機に直面したときのケネディ大統領の行動だったといいます。何かといえば、「外交力が最悪の事態を回避させた」という教訓に他なりません。

 1962年当時、アメリカはソ連と対話を重ね、危機を乗り越える道を見出しました。しかし、こんにち、アメリカとロシアの間に対話のチャンネルはありません。外交といえるような交渉の場が、米ロ間には存在していないのです。

 そのため、アメリカもロシアも最終兵器である核の使用をちらつかせる事態に至っています。これでは、核兵器の応酬がいつ起きてもおかしくない状況です。国連で軍縮を担当する中満泉事務次長曰く、「核兵器が使用される恐れは冷戦時代よりはるかに現実味を帯びてきた」。

 アメリカの原子力科学者組織が警鐘を鳴らす「終末時計」も、「残り時間は90秒」と、1947年以来最悪となる人類最後の日の到来を暗示しています。このままでは2026年2月に米ロ間の歯止めはなくなることが確実視されているのです。相互の査察は中止され、不信感が高じて、核の応酬が現実化する恐れは強まる一方です。

 今こそ国連の出番と思われます。ところが、グレーテス事務総長は「地球温暖化を食い止めるために、G20諸国は率先して化石燃料の使用をゼロにすべき」とは声高に訴えているものの、核戦争の回避に向けての根回しはできていません。そのため、危機的状況は悪化するばかり。

 ウクライナに限らず、朝鮮半島でも同様の危機的状況が迫っています。なぜなら、先にワシントンを訪問した韓国のユン大統領はアメリカの要請を受け、韓国製の武器弾薬をドイツ経由でウクライナへ提供することを決定。これに反発したロシアは北朝鮮に対する軍事支援を強化し、韓国への核ミサイル攻撃の可能性を示唆しているからです。

 危機感を強めた韓国は、アメリカによる核の傘を強く求めるようになり、日米韓3カ国の防衛協力体制の構築も推進されるようになりました。日本では「ウクライナ戦争が台湾有事をもたらすのではないか」といった不安が高まっていますが、朝鮮半島有事も念頭に置いておく必要もあります。

 しかも、ウクライナ戦争が長期化するなか、世界の食糧事情は悪化する一方です。ウクライナのキエフ経済大学の分析では、トウモロコシやライ麦の生産が戦争前の状態に戻るには少なくとも2050年までかかるもよう。大麦や小麦、はたまたヒマワリなどの生産も、2040年より前には期待できないといいます。

 その上、アメリカはウクライナへの軍事支援の一環として劣化ウラン弾などを支給しているため、ウクライナの農地や牧草地が放射能汚染に晒されるという深刻な事態にも直面しているのです。これまでウクライナ産の穀物やヒマワリ油は世界市場で大きなウェイトを占めていました。ウクライナでの生産や輸出が大きく滞っているため、ヨーロッパでの食糧事情は深刻な影響を受けています。

 ウクライナ戦争はヨーロッパ全域を飲み込む勢いで被害を拡大させているわけです。ところが、休戦や終戦に向けての平和交渉はまったく進んでいません。戦争の拡大はあっても、和平に向けての外交努力はないに等しい状況です。一部の国が仲介の労を取ろうと動いていますが、当事国は聞く耳をもっていません。

 これでは、国連の平和維持に向けての存在感は薄くなるばかりです。ウクライナ戦争の一方の当事国であるロシアが安全保障理事会の常任理事国であり、2014年以降のクリミア併合やドンバス紛争に際しても、国連総会ではロシアを非難する決議案が賛成多数で採択されてきましたが、安保理ではロシアの拒否権の行使によって、ロシア軍のウクライナからの即時撤退を求める決議案は採択されることはありませんでした。

 そのため、ウクライナは安保理からロシアを除名するような働きかけを強めています。と同時に、アメリカは安保理の構成国を拡大する案を模索し始めました。バイデン大統領曰く、「安保理にはラテンアメリカやアフリカなどグローバルサウスの代表を入れるべきだ」。安保理の機能不全を回避するために、これまでも常任理事国に新たにドイツ、日本、インドを加えるべきとの提案がなされましたが、いずれも実現には至っていません。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
    国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

(後)

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