豊肥本線の現状と活性化に向けた今後の課題(前)
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運輸評論家 堀内 重人
豊肥本線は、熊本と大分を結ぶ九州を横断する路線である。2016年4月の熊本地震で被災し、20年8月に全線で運転を再開しているが、昨今では高規格道路の整備が進み、かつて1日に3往復あった熊本~大分間の特急は2往復に削減されるなど、このまま何もしなければ、都市間連絡の機能はバスに奪われ、同線はローカル輸送だけを行う路線に成り下がる危険性もある。幸いなことに、阿蘇には観光資源が豊富であることから、同線は昔から観光路線として観光列車を運転してきた歴史がある。本稿は、豊肥本線の地域輸送と優等列車などの現状について説明し、観光路線へ脱皮させる方法を模索したい。
熊本~肥後大津間
この区間は、1999年に熊本国体に合わせて電化された。熊本市が政令指定都市であるから、熊本都市圏の通勤・通学路線となっており、沿線には学校や新興住宅地が多くある。
熊本駅のある位置は市の中心部からやや離れているが、一方で新水前寺駅は東部へ広がる住宅地に近く、熊本市電と連絡する駅であるため、近年では1日当たりの利用者数は約4,200人と、県内で第2位の利用者数を誇る。
2両編成の電車により、昼間は1時間あたり3本程度の運転が実施され、熊本近郊区間となっている。また早朝と朝の通勤時間帯および深夜には、熊本~光の森間の区間運転列車も設定されている。
平日の朝ラッシュ時は、約10分間隔で運転されるが、混雑するため4両編成で運転される。夕方も高校生や通勤客の利用が多いが、朝のように4両編成で運転される列車はない。いずれの時間帯も、新水前寺~光の森間はとくに混雑が激しい。また鹿児島本線との直通列車も、少数ながら設定されている。
九州新幹線の開業後は、始発は5時台から始まり、終電は午前0時台と遅くまで運転している。午前0時台の終電は、九州新幹線が全線開業した2012年3月以降に新設された。
熊本都市圏の人口の多い区間のため、終日にわたって利用者が多い。
肥後大津~宮地間
肥後大津から先は非電化となる。阿蘇~肥後大津間は16年の熊本地震の影響で、長らく不通となっていたが、20年8月8日に復旧した。
肥後大津~宮地間は、概ね1~2時間に1本の運転である。大半の列車が、肥後大津~宮地間の折り返し運行で、肥後大津で熊本発着の電車に接続する。一部は、気動車を使用して熊本~宮地間の列車が設定されたり、肥後大津~豊後竹田間の列車もある。2両編成の気動車で運転されるが、なかには単行の気動車列車もある。阿蘇山の外輪山の急勾配を克服するため、立野でスイッチバックして外輪山を登り、火口原に入る。
被災前は、宮地~肥後大津間には、2両編成の気動車による列車が、1時間に1本程度は運転されており、最終列車の宮地到着は、翌日午前0時を過ぎていた。
23年7月15日からは、南阿蘇鉄道が全線で復旧したことにともない、朝の時間帯に南阿蘇鉄道からの直通列車が、立野を過ぎて肥後大津まで2往復運行される。
13年3月16日のダイヤ改正より、全列車の全ドアから乗降が可能な区間が、立野~熊本間に拡大された。
宮地~豊後竹田間
山間部の過疎地を走るため、駅間距離がほかの区間より長くなり、利用者も少ない。宮地を出ると列車は、豊肥本線の最高点である延長2,880mの坂の上トンネルが分水嶺であり、これからは下り勾配となる。また滝水と豊後荻の間に、熊本県と大分県の県境があることから、人々の行動圏が異なることもあり、県境を跨いだ通学需要などはないといえる。
それゆえ運転本数も、この区間の通しで運転される普通列車は、1日に5往復しか設定されていない。豊後荻発の豊後竹田行きの区間列車が、下り1本のみ設定されているが、3~5時間ほど運転間隔が開く時間帯がある。この区間は、ワンマン運転対応の気動車による単行の運転が行われている。
豊後竹田は、豊肥本線の沿線の主要駅であり、瀧廉太郎が作曲した『荒城の月』でも有名であり、舞台となった岡城は、豊後竹田駅の近くにある。
豊後竹田~大分間
大分~中判田・犬飼・三重町間の区間運転の列車も設定されている。大分~豊後竹田間は1時間あたりの直通が1本であるが、日中は2時間前後も運転間隔が開く場合もある。
ただし中判田~大分間は、大分市の近郊区間に入り、大分大学をはじめ、高校なども多数あることから、乗客・運行本数共に多くなる。豊肥本線は、国道10号に並行して東九州の中核都市である大分市の市街地を縦断する。
区間運転の列車が設定されており、1時間あたり2本になる。そして朝夕のラッシュ時には、犬飼・三重町~大分間の列車の設定があるなど、将来的には熊本近郊区間のように電化を行って、サービス改善を行っても良い区間である。
大分~三重町間と、肥後大津~熊本間で運転されるワンマン運転の2両編成の普通列車は、06年3月18日のダイヤ改正で、すべての駅で列車のホーム側の全ドアから乗降が可能となった。
(つづく)
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