豊肥本線の現状と活性化に向けた今後の課題(中)
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運輸評論家 堀内 重人
豊肥本線は、熊本と大分を結ぶ九州を横断する路線である。2016年4月の熊本地震で被災し、20年8月に全線で運転を再開しているが、昨今では高規格道路の整備が進み、かつて1日に3往復あった熊本~大分間の特急は2往復に削減されるなど、このまま何もしなければ、都市間連絡の機能はバスに奪われ、同線はローカル輸送だけを行う路線に成り下がる危険性もある。幸いなことに、阿蘇には観光資源が豊富であることから、同線は昔から観光路線として観光列車を運転してきた歴史がある。本稿は、豊肥本線の地域輸送と優等列車などの現状について説明し、観光路線へ脱皮させる方法を模索したい。
豊肥本線の優等列車
沿線に阿蘇山を有する豊肥本線は、昔から観光路線として位置付けられており、1958年からは準急「ひかり」が運行された。そして61年からは、循環列車となる準急「ひまわり」が設定された。
その後に「準急」という種別が廃止されて「急行」になる以外に、列車名の統合などの変遷を経て、豊肥本線内の優等列車は、急行「火の山」に統合された。急行「火の山」の一部は、天草諸島や島原半島へ向かう観光客の利便を考慮して、三角線三角駅まで直通運転が行われた。そんな急行「火の山」にも転機が訪れ、92年に特急「あそ」に昇格し、車両もキハ185系気動車(写真1)に置き換えられた。この車両は、国鉄末期にJR四国用に投入された特急用気動車であるが、JR九州が購入した後は、リニューアルしている。
JR九州の創意工夫として、87年から途中の中断を経て、九州新幹線の鹿児島ルートが全線開業時までは、鹿児島本線の博多駅発着の特急「有明」が、豊肥本線内の肥後大津まで乗り入れていた。
熊本市~福岡市の間は、九州自動車道経由で両都市を結ぶ高速バス「ひのくに号」と、激しく競合していた。熊本駅のある位置が悪いだけでなく、福岡市側も博多駅の位置が良いとはいえない。対する高速バスは、都心部の天神に乗り入れているため、利便性が良い。
豊肥本線へ乗り入れを開始した当初は、豊肥本線は非電化であり、ディーゼル機関車が特急電車を牽引して、豊肥本線の水前寺まで乗り入れていた。
94年にいったん廃止された後、99年の熊本~肥後大津間の電化開業にともない、乗り入れが再開され、運転区間も肥後大津まで拡大された。
2004年3月13日に、九州新幹線の新八代~鹿児島中央間が暫定開業すると、新幹線アクセス機能を強化するため、特急「あそ」と肥薩線の特急「くまがわ」の一部の列車が統合されて、「九州横断特急」となった。運転区間も、別府~大分~熊本~人吉間に変更され、新八代で新幹線とアクセスさせるかたちで、観光機能が強化された。
07年3月18日のダイヤ改正からは、早朝の博多行きの「有明」1本が、豊肥本線内の光の森駅から熊本間が、普通列車として運転されていたが、九州新幹線の鹿児島ルートが全線開業にともない、11年3月11日限りで、特急「有明」は、上下それぞれ1本に削減されたため、豊肥本線への乗り入れが終了した。「九州横断特急」も、一部の列車が熊本発着に変更され、16年3月26日のダイヤ改正では、「九州横断特急」は熊本~人吉間の運転が取り止められ、全列車が熊本発着となった。
20年8月8日に、豊肥本線の全線で運転が再開した時点のダイヤでは、別府~熊本間に、毎日運転の「九州横断特急」1往復に加え、週末や祝日、夏休みなどの長期休暇期間には、特急「あそぼーい」(写真2)が運転されるが、それ以外の日や車両が検査される時期は、同一時刻で「九州横断特急」が1往復運行される。また全線で運転を再開するのに合わせ、宮地~熊本間には特急「あそ」が3往復設定されたが、2往復は土休日など多客期に運転する列車である。
「九州横断特急」と特急「あそ」は、キハ185系気動車が使用されるが、ワンマン運転が実施されている。
熊本~大分間を結ぶ優等列車は、「九州横断特急」が1日に1往復、特急「あそぼーい」が1日に1往復運転されるが、特急「あそぼーい」は全車が座席指定席である。特急「あそぼ-い」が運転されない日は、そのダイヤで「九州横断特急」が運転される。
(つづく)
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