2024年07月17日( 水 )

汚染水投棄反対論拠報じぬ不正

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、処理水の海洋放出をめぐって政府寄りの報道を批判した8月27日付の記事を紹介する。

TBSには「報道特集」のような優れた番組もあるが「サンデージャポン」のような低俗番組もある。視聴者は番組の特性を踏まえて接することが必要。8月27日放送の「サンデージャポン」はNHKを上回る御用政府広報番組だった。東電は処理後の放射能汚染水の海洋投棄を開始した。

「トリチウム濃度が基準以下に薄められているから安全」というのが政府・東電の説明。諸外国でもトリチウムの海洋放出を行っており、国際比較上、日本の海洋投棄は問題にならないとする。

他方、処理後放射能汚染水を海洋投棄すべきでないとの声は国内にも存在する。その理由は何か。主たる理由を3つ挙げることができる。

第一は海洋投棄する放射性物質の総量が大きくなるとの問題。
第二は福島の汚染水はメルトダウンした燃料デブリに直接触れた汚染水を処理したもので海外の事例とは汚染水の種類が異なること。
第三はALPSで除去できない核種が存在することが明らかになっており、トリチウム以外の各種が完全に除去されているのかについての疑念が存在するなかで、検査データを監視可能な形態で完全公開すること求められているが東電がこれに応じていないこと。

東電が公表するトリチウム濃度は基準値以下とされるが、これ以外の問題がある。問題がないなら、そもそもタンクに貯めて貯蔵する必要はなかったはず。海外で放出しているトリチウム汚染水と違いがないなら、当初から海洋放出していたはず。

海洋放出できずにタンクに貯蔵してきたこと自体が福島汚染水の「特殊性」を物語っている。実際に、タンクに貯蔵されている水の7割近くに、トリチウム以外の放射性核種が排出濃度基準を上回って残存していると見られている。

ヨウ素129、ストロンチウム90、ルテニウム106、テクネチウム99、セシウム137、プルトニウム239、炭素14、カドミウム113mなどが残存している。

認定特定非営利活動法人のFoE Japanが公表した「【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたい14のポイント」(https://foejapan.org/issue/20230801/13668/)は、東電がソースターム(放出する放射性物質の種類と量)として示しているのは、3つのタンク群(合計3.6万m3)のみで、タンクの水全体の3%弱にすぎず、64の放射性物質(ALPS除去対象の62核種、トリチウム、炭素14)のデータがそろっているのは、この3つのタンク群だけだと指摘している。

東電は、現在タンクにためられている水の7割弱で、トリチウム以外の62の放射性核種の濃度が全体として排出基準を上回っており、最大で基準の2万倍近くとなっていることが明らかになったと発表している。東電は海洋投棄する前に二次処理を行い、これらの放射性核種も基準値以下にするとしているが、これらの説明に信ぴょう性を置けるのかが問題になる。

※続きは8月27日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「汚染水投棄反対論拠報じぬ不正」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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